最新記事

中露関係

米中の関係悪化に乗じて中国に食い込むロシアのプーチン

U.S. Military Wants to Fix China Ties, Russia Blocks It

2018年10月19日(金)16時15分
トム・オコナー

ロシア軍は9月に極東で大規模軍事演習ボストークを行い、中国軍も参加した(プーチンと中国の魏鳳和国防相<写真奥>) Sputnik/Alexei Nikolsky/Kremlin/REUTERS

<関係悪化が止まらないアメリカと中国。偶発衝突を避けるため軍事面での連携強化を働きかけるマティス米国防長官の前に、プーチンが立ちはだかる>

米中の緊張が高まるなか、米軍が中国との関係修復を模索したい考えを表明。だがそこには既にロシアがいた──。

ジェームズ・マティス米国防長官は10月18日、シンガポールで開かれるASEAN(東南アジア諸国連合)の国防相会議に合わせて、中国の魏鳳和国防相と会談。両者が顔を合わせるのは、中国側が9月末、10月に予定されていたマティスとの協議を中止してから初めてのことだ。1時間半近くに及んだ会談の内容は明らかにされていないが、会談に同席した米国防総省のある高官によれば、マティスは米中の連携強化を強く呼びかけたという。

ランドール・シュライバー米国防次官補(アジア太平洋担当)によれば、マティスは潜在的に危険な「考え方の相違や不快な事態がある時は特に、意見の相違や対処法を話し合うためのハイレベルな対話機会を持つべきだ」と述べたという。だがシュライバーは、ドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争については、今回の会談では解決に至らなかった、とも語った。

アメリカの制裁を受ける国同士

こうしたなか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はセルゲイ・ショイグ国防相を中国に派遣し、中国との緊密な関係をアピールした。中国とロシアはそろってアメリカからの経済制裁に苦しむ仲だけに、親近感はひとしおだろう。10月18日、ロシア南部のソチで開催されていた国際有識者会議「バルダイ・クラブ討論会」のセッションでは、中国とロシアが経済面および政治面での関係を強化しつつあることが強調された。

トランプと中国の習近平国家主席は、貿易面で報復関税の応酬を激化させている。その間にプーチンは、「『親愛なる友人、習』の一帯一路イニシアチブに貢献し、中国がアジア全域やそれ以外の地域に通商路や経済的影響力を拡大するのを手助けする」ことでロシアが利益を得る方法を見出した。

「たとえば、従来中国に大量の大豆を輸出してきたのはアメリカだが、今後はロシアがこの市場に参入していく。中国側のパートナーがこの分野への投資を望むなら、大豆生産に極東の土地を提供してもいい」とプーチンは語り、両国は航空機の技術でも協力を行っているとつけ加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、対ロ制裁法案に署名へ 最終権限保持なら

ビジネス

エアバス、A350の大型派生機を現在も検討=民間機

ビジネス

ヤム・チャイナ、KFC・ピザハット積極出店・収益性

ビジネス

午前のドル155円前半、一時9カ月半ぶり高値 円安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中