最新記事

映画祭

静かな空間を切り裂く悲鳴! VRで未来の映画館を体験させた釜山国際映画祭

2018年10月26日(金)20時00分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

大ヒット作からのVRコンテンツ展開という映画の新しい方向性が見えた今年の釜山国際映画祭 (撮影筆者)

<旭日旗問題など政治がらみの話題が日本では注目された釜山国際映画祭。だが実際に会場で注目を集めていたのは?>

毎年さまざまな話題で注目を集める釜山国際映画祭。今年は10月4日から13日まで9日間、国内外から19万5081人もの人が訪れ、79カ国324作品が上映された。コンペティション部門の他にも多彩な上映部門やワールド・プレミアも多く、またアジアを中心に世界中の俳優や監督、プロデューサーたちが訪れる映画祭として有名である。

参考記事:「旭日旗から中国美人女優の失踪問題まで 今年も政治が持ち込まれた釜山国際映画祭」

一般の映画ファンにとってはコンペティションと作品上映が映画祭の"顔"だが、他にも映画の上映版権を売り買いするAsian Film Market、資金調達が完了していない映画企画と映画業界関係者や出資者が個別ミーティングができるAsian Project Market、ワークショップなどで新たらしい映画人を育てるAsian Film Academy、映画への投資を行うAsian Cinema Fundなど、映画祭期間中は多くの企画やイベントが目白押しだ。筆者はAsian Film Marketのタイミングに合わせて渡韓した。

昨年は4つの賞を受賞した日本だったが、今年は残念ながら日本映画作品が賞を受賞することはなかった。だが、日中韓合作アニメ『ずっとずっといっしょだよ』の音楽を担当し、開幕式でもピアノの演奏を披露した坂本龍一が「Asian Filmmaker of the Year Award」を受賞した。

アジア圏の新人監督に贈られる賞であるニューカレント賞は2作、中国の『SAVAGE』(崔斯韋監督)と、韓国の『Clean up』(クォン・マンギ監督)が選ばれた。また、「アジア映画の窓」部門から若手監督の作品に賞を贈るキム・ジソク賞は、中国の『The Rib』(チャン・イ監督)と、アフガニスタン・イラン合作『Rona, Azim's Mother』(ヤムシッド・マムーディ監督)の2作が選ばれた。

『Rona, Azim's Mother』は、テヘランで働くアフガン移民アジムとその家族を描いた作品だ。主人公の男アジムは母の腎臓手術のためイランでドナーを見つけようとするが、さまざまな問題が立ちはだかり、自らの腎臓を提供するか悩む──という物語で、すでに2019年の米アカデミー賞外国語映画部門のアフガニスタン代表作品に選ばれている。釜山がアジアを代表する映画祭と言われる理由の一つには、このようにアジア映画を中心に多くのコンペティション部門を設けている点がある。

biff_20181026201542.jpg

(左)台風25号が直撃したためいつもなら映画関係者で賑わう海雲台のビーチも閑散としていたが、それでもこの時期は街のいたるところに映画祭の告知が目に付く(右)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中