最新記事

中国

日朝極秘接触リークの背後に日米離間を狙う中国が――米国の対中制裁の抜け道を日本に求める

2018年9月3日(月)10時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

8月10日付のコラム<「BRICS+」でトランプに対抗する習近平――中国製造2025と米中貿易戦争>で述べたように、中国はハイテク製品生産量(輸出量)世界一を誇っているが、実は半導体などのコア技術に相当する「キー・パーツ」は、90%ほどが輸入品である。米日韓あるいは台湾などから輸入している。それを組み立ててハイテク製品を製造し、世界中に売りまくっているというのが現状だ。

このままでは中国は永遠に「組み立てプラットホーム」から抜け出せない後進国になってしまう。だから2015年から「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」という国家計画を打ち立て、2025年までにはキー・パーツの70%を中国国産にして自給自足を図るという戦略で中国はいま動いている。そうしなければ、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」による一党支配体制を維持することもできない。なぜなら習近平政権の政権スローガンである「中華民族の偉大なる復興」による「中国の夢」を叶えることができないからだ。

しかしトランプは、この「中国製造2025」を実現させまいと、中国のハイテク分野に猛烈な攻撃をかけているのである。なぜなら、これが実現すれば、中国はハイテク分野において量的だけではなく質的にもアメリカを凌駕してしまうからだ。中国は、「トランプは中国の社会主義体制を崩壊させようとしている」と解釈している。

だから国運をかけてトランプの対中制裁と戦い、中国が受けるダメージを回避するために「日本に抜け道を求めようとしている」のである。

露骨な対日懐柔策――日米離間を図る中国

最近の日中の動向を、その視点で見まわしてみていただきたい。

中国は今年5月に李克強首相を訪日させた。輪番制により東京で開催される日中韓首脳会談に参加するためではあるが、このとき中国の鐘山商務部長が同行していたことを見逃してはならない。世耕経産大臣と会談したことを、中国政府の通信社「新華社」電子版の新華網は大きく伝えている。「鐘山・世耕」会談では、(米国の一国主義に反対して)「多国間貿易を推進する」ことを誓ったと、中央テレビ局CCTVも繰り返し伝えた。

鐘山は第19回党大会(2017年10月18日~10月24日)が終わった11月21日にも訪日し、日中経済協会の宗岡会長や日本経団連の榊原会長らと会い、日中経済協力の重要性に関して話し合った。中華人民共和国商務部のウェブサイトが詳細を伝えた。

安倍首相自身、10月に予定されている訪中に胸を膨らませ、遠くない将来に実現するであろう習近平国家主席の訪日を、大きな政治業績の一つにしようと構えている。

先月の8月31日には麻生太郎財務大臣が中国のチャイナ・セブン党内序列ナンバー7の韓正国務院副総理(財務担当)と会談し、米国を念頭に「保護主義に反対する」と意気投合した。麻生氏は「今までの中で一番雰囲気が良かった」と嬉しそうに語ったばかりだ。CCTVがその笑顔を「戦利品のごとく」大写しにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

デンソー、今期営業利益予想は87%増 合理化など寄

ビジネス

S&P、ボーイングの格付け見通し引き下げ ジャンク

ワールド

ポーランドの米核兵器受け入れ議論、ロシア「危険なゲ

ビジネス

バーゼル委、銀行監督規則を強化 気候変動関連リスク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中