最新記事

中国

日朝極秘接触リークの背後に日米離間を狙う中国が――米国の対中制裁の抜け道を日本に求める

2018年9月3日(月)10時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

自民党の二階俊博幹事長も負けていない。8月31日に北京の中南海で、王岐山国家副主席と会談し、満面の笑みで王岐山の訪日を呼びかけ、安倍首相訪中の花道を飾ろうとしている。

このような「日中友好真っ盛り」の雰囲気を、中国が必死になって「戦略的に」創り出そうとしているのは、ほかでもない、米国の対中制裁の抜け道を日本に求めているからだ。つまり、国運をかけて日米離間を目論んでいる。

韓国はなぜ中国の指示に従うのか?

だから韓国にリークせよと持ちかけた。

中韓で情報を共有しているだろうことは、まず前提として、なぜ韓国は中国の指示に従わねばならないのかを最後に考察する。

一つ目は例のTHAADの韓国配備に関する中国の報復措置の解除は、まだ完全には実行されていない。この経済報復を完全解除してくれないと、中国への輸出に依存している韓国経済は立ち行かない。

そこに、この半導体問題。

もし中国が韓国からの輸入を増やさずに、日本あるいは台湾からの輸入を増やしてアメリカによる制裁の悪影響を回避するとすれば、韓国経済はさらなる打撃を受ける。だから中国は対日懐柔をする一方で、韓国が「日米離間」のために動いてくれれば、決して韓国を見捨てないと「すごむ」ことが中国にはできる。

ダメ押しのためもあって、まもなく中国外交の最高位にいる楊潔チ中共中央政治局委員が訪韓する。第19回党大会以来、これで3度目となる。

以上より、日朝極秘接触をリークした韓国の背後には、実は日米離間を狙う中国がいたであろうことが、推察できるのである。

安倍首相は「トランプと100%共にいる」と言い続けることができるのか?

トランプはやがて日本も米国と同じく対中制裁をせよと言ってくるだろう。中国はその前に何としても日本を中国側に惹きつけておこうと必死だ。

中国の戦略に嵌ってしまった安倍政権は、果たして「ShinzoとDonaldは100%共にいる」と誓い続けることができるだろうか?トランプの対中制裁要求を受け容れるのか、それともアメリカに抵抗するのか?受け容れたら、対中輸出に大きく依存する日本の半導体業界は壊滅的打撃を受けるだろう。日本全体の輸出総額の第二位が半導体等電子製品であることを考えると、日本経済全体に与えるダメージは計り知れない。

ワシントン・ポストは同報道で、トランプが安倍首相に真珠湾攻撃を持ち出し、安倍首相が黙っていたと書いている。日米の今後を示すものとして、あまりに示唆的だ。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中