最新記事

アメリカ政治

アメリカ中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か

2018年9月1日(土)12時00分

戦力の集中投下

民主党の2つのスーパーPAC(政治資金団体)である「プライオリティズUSA」と「シネート・マジョリティPAC」は、少なくとも総計で1億2000万ドル(約134億円)をアリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタでの宣伝費に投入している。

スーパーPACは特定候補・政党の選挙戦とは独立して行動しなければならないが、金額に制約なく資金を集め、支出することができる。

民主党上院選挙対策委員会の独立支出部門は、アリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタの各州で当面のCM枠として3000万ドル分を確保している。

また民主党関係者によれば、同党とその外部グループは、テネシー、テキサス両州でも、見込み薄ながらも議席奪還をめざして資金を投じているという。

最近の世論調査によれば、テキサス州では現職の共和党テッド・クルーズ上院議員に対し、挑戦者である民主党ベト・オルーク氏が2─4ポイントという僅差で追走している。

また現職引退を受けたオープンレースとなっているテネシー州では、人気の高い穏健派の民主党フィル・ブレッドセン知事が、共和党のマーシャ・ブラックバーン下院議員とつばぜり合いを演じているという調査結果になっている。

医療、税金、政治腐敗

民主党内での調査によれば、中間選挙で民主党候補にとって有利な争点となるのは、医療制度と、共和党による減税政策だという。有権者の中には、この減税政策が富裕な個人・企業に対する「ばら撒き」だという見方があるためだ。

民主党の戦略担当者であるカレン・フィニー氏はシカゴでの会合の際、「医療制度のような重要テーマは、有権者にとって本当に深刻だ。共和党は減税政策でポイントを稼げると考えていたが、逆に弱点となっている」と話している。「われわれはこうした主要な争点を巡るトレンドを有利に使っている」

今月、トランプ大統領の元選対本部長ポール・マナフォート氏が有罪評決を受け、元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が罪状を認める証言を行ったことを受けて、民主党全国委員会のトム・ペリッツ会長は、上院選挙のなかで民主党がトランプ大統領をめぐる法的なトラブルを強調していくことを明らかにした。

コーエン氏は脱税、銀行詐欺、選挙資金に関する違反などの連邦犯罪の告発について罪状を認めた。同氏はトランプ氏と性的関係があったと主張する2人の女性に対して口止め料を払うよう、トランプ氏本人から指示を受け、その支払いは2016年の大統領選挙を考慮したものである、と証言している。

これらの女性との関係を否認しているトランプ大統領は、コーエン氏には個人的な資産から支払いを行っており、選挙戦を有利に進めるためではなく、個人的な問題を解決するために支払ったものだと主張している。

「この共和党政権に見られる腐敗の文化は手に負えなくなっている」と、ペリッツ氏は民主党の会合で語った。

(翻訳:エァクレーレン)

Tim Reid

[シカゴ 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中