最新記事

日本政治

女性の政治参加が進まない国で、野田総務相が示す「覚悟」

2018年8月28日(火)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

女性の政治参加が進まない

現在、衆議院の女性議員の中では最多当選の野田氏は、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(全員参加)といった問題にも積極的に発言、活動している。特に「政策決定の場に女性が少なすぎることが、この国の政策にゆがみをもたらしている」として女性議員の増加に力を入れている。

日本の一般企業で管理職に占める女性の割合は、2017年の調査でも13.2%。アメリカの43.4%(2013年)、イギリスの36.0%(2016年)、ドイツの29.3%(2016年)などと比較すると、依然として非常に低い水準に留まっていることがわかる。それはそのまま、政治の世界にも当てはまる。

2017年に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、日本における男女の格差は、世界144カ国中114位となっている。だが、その詳細を見てみれば、4つの指数のうち「健康」では1位。「教育」でも74位と、さほど決定的な順位ではない。

対して、「経済参画」は114位、「政治参画」は実に123位だ。つまり、女性議員の少なさが日本の男女格差の大きなネックになっている。そこで野田氏など有志は、議席や候補者の一定割合を女性とする「クオータ制」の導入を目指したが、強い反対に遭って実現には至っていない。

自民党の中にはいまだに、支持率が高いゆえに「国民の多数が自民党はいいと言っているんだから、べつに女性は要らないでしょう」といった意見があるという。女性議員の比率を将来は五分五分にすると聞いて、「これ以上の女性の社会進出は国を滅ぼす」と言った国会議員もいるらしい。

政治の力で「違和感」を解消する

もっぱら男性が持っている既得権を、強引に引き剥がすとまでは言わずとも、痛くないように剥がしていくにはどうすればいいのか――そんな苦悩ものぞかせながら、同時に野田氏は、クオータ制に反対する議員の中に女性も多くいることを嘆いている。

そうした女性議員は、自分は実力で当選したのに、クオータ制で女性枠ができたら自分の力が過小評価される、という点を心配しているのだ(本書で野田氏と対談しているカルビーシニアチェアマンの松本晃氏は、これを「『女王蜂』状態」と呼ぶ)。

これこそ、ダイバーシティを妨げる既得権益だと言える。結局のところ、男性でも女性でも変わりはない。また他のどんな集団であっても、自分たちとは違う「異物」に対する違和感は当然あり、そこには既得権が付き物だ。

既得権は、いつかは手放す日が来るだろうが、それよりも政治の力で制度化することで、思い切って異物をどんどん入れてしまえば、もう異物ではなくなる。そうすれば既得権益などなくなる。それが、野田氏が総理を目指す理由のひとつになっている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相や英国のテリーザ・メイ首相をはじめとして、世界各国では女性リーダーが当然のように増えている。果たして、日本初の女性総理の誕生は、いつになるだろうか。


『みらいを、つかめ――多様なみんなが活躍する時代に』
 野田聖子 著
 CCCメディアハウス

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

FRB理事候補ミラン氏、政権からの利下げ圧力を否定

ワールド

ウクライナ安全保証、26カ国が部隊派遣確約 米国の

ビジネス

米ISM非製造業指数、8月は52.0に上昇 雇用は

ビジネス

米新規失業保険申請、予想以上に増加 労働市場の軟化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 7
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 8
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 9
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中