最新記事

性暴力

インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐待の日々

2018年8月8日(水)12時48分
大塚智彦(PanAsiaNews)

人びとの心を乗っ取り、女性を意のままにした老呪術師。 (c) ANTV News Plus / YouTube

<村人の「心の支え」だった呪術師は、用意周到に少女と周りの人びとをマインドコントロールしていた>

インドネシアのスラウェシ島中央スラウェシ州トリトリ地方にあるガルンパン村近くの山の中で8月5日に1人の女性が地元警察によって発見、保護された。28歳というこの女性は、2003年に行方不明となった同村出身の女性で、失踪当時は13歳だったことがわかった。警察はプライバシー保護の観点からこの女性の名前をイニシャルで「HS」としか公表していない。

警察は未成年保護法違反と児童虐待の容疑で同村に住む男性、ジャゴ容疑者(83)の身柄を拘束して事情聴取を続けている。

13歳の時にジャゴ容疑者に騙され連れ去られて以来、HSさんは15年もの長期間、山中の岩の間にある小さな洞窟のような窪みに捕らわれの身となり、夜は容疑者所有の小屋に寝泊まりしていた。HSさんはインドネシアの地方に未だに残る民間信仰や精霊信仰、呪術や魔法などの影響で、脱出したり助けを求めたりすることができなかったという。

「霊魂(インドネシア語でジン)が穴や小屋の周りを守っているので外に1人で出ることはできない」とジャゴ容疑者に厳しく言われ、それを信じ込んでいたのが理由という。

インドネシア地元紙などの報道によると、ジャゴ容疑者は村では呪術師として知られ、病気治癒や心願成就など村人の「心の支え」的存在だったという。祈祷師的な振る舞いの他に村人が抱える恋愛、結婚、仕事などの悩みごとの相談に応じ、解決策を示すなど大きな信頼を得ていたことも、HSさんの脱出や事件の発覚を遅らせたものとみられている。

発覚のきっかけは身内のケンカ

実はジャゴ容疑者の息子は行方不明になったHSさんの姉と結婚しており、姉は薄々義父であるジャゴ容疑者が妹のHSさんを誘拐拉致し、どこかに監禁していることに気づき始めたものの沈黙を守っていた。ところが何かのきっかけで夫と激しい口論になり、その際姉が「妹のことをしかるべきところに報告する」と夫を大声で責めたてた。

このやり取りを聞いていた隣人が、警察に届け出たのが事件発覚の端緒になったという。

トリトリ警察のイクバル・アルクドゥスティ署長は地元紙に対し、「ジャゴ容疑者を拘束して厳しく追及、聞きだした供述に基づいて山中を捜索したところ、1×1.5メートルの岩の割れ目から入った空間でHSさんを発見、救出した」と述べた。

ジャゴ容疑者はHSさんに対して、地元の精霊信仰に基づき、かつて彼女が好意を寄せていた男性の名前を語り、「彼の霊魂(ジン)が自分(ジャゴ容疑者)に乗り移っている」とそそのかして、日常的にHSさんと性交していたという。

イクバル署長は「HSさんの供述によると何度か生理が来ないことがあったが、その度にジャゴ容疑者から薬を飲まされて中絶させられていたようだ」と話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界秩序は変化「断絶ではない」、ECB総裁が加首相

ビジネス

シティ、3月も人員削減へ 1月の1000人削減後=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月速報値51.5で横ばい 価

ビジネス

グリーン英中銀委員、インフレ圧力や賃金上昇指標を依
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 10
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中