最新記事

貿易戦争

トランプは、WTO脱退かそれに相当する法案を準備している 米紙報道

2018年7月3日(火)15時40分
トム・ポーター

大統領専用機エアフォース・ワンで記者たちの質問に答えるトランプ Eric Thayer-REUTERS

<WTO脱退に至る前の手段として、議会の承認なしにトランプが自由に関税を引き上げられる法案の起草を指示していた>

ドナルド・トランプ米大統領が、大統領の裁量で自由に関税を引き上げられる新たな法案を起草するよう指示を出したことが、ニュースサイト「アクシオス」が入手したリーク資料から明らかになった。WTO(世界貿易機関)のルールに違反する内容だ。

アクシオスが草案を入手したと報じたこの法案は、「米国公正互恵関税法(仮)」という名称で、これによると、トランプは議会の承認なく自由に関税を引き上げられることになる。

WTOは加盟国に対し、国別に異なる関税率を設けることを禁じており、トランプの法案はこれに抵触する。

今回の法案をよく知る関係筋はアクシオスに対し、「これではアメリカは通告もなしにWTOから脱退するのに等しい」と語った。ただし、米議会がいくらなんでもこんな「ばかげた」法案を通すはずはない、と付け加えた。

ホワイトハウスの報道官はアクシオスに対し、これは単なる草案に過ぎす、騒ぐことではないと述べた。「実際に法律が成立して米政府が施行しようとしているならニュースだろうが、そうではない」

アメリカを騙すための機関

アクシオスの6月29日付け報道によれば、トランプは側近にWTOから脱退したいと言っていた。そしてWTOは「アメリカを騙すための機関だ」と語ったという。その後、トランプは大統領専用機エアフォース・ワンで記者団に対し、「現時点では」WTOからの脱退は考えていないとしながらも、「何とかしなければならない。われわれは貿易で不公平な扱いを受けている」と語ったとAP通信は報じている。

WTOは、関税貿易一般協定(GATT)から誕生した組織で、貿易摩擦を解消するために1995年に設立された。加盟国は一連のルールに従うことに同意し、不公平な貿易慣行の排除と市場の開放を目指している。

世界最大の経済国であるアメリカがWTOから脱退すれば、ルールに基づいた貿易制度の終焉になりかねないと、エコノミストは警鐘を鳴らす。

アメリカは先ごろ、EUとカナダに追加関税を発動。EUとカナダもそれに対抗し、報復関税を発動。ますます貿易戦争の様相を呈している。

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中