最新記事

米朝関係

北朝鮮「非核化の意思」は本当か、試されるトランプ外交の成果

2018年7月6日(金)16時30分
ジェイソン・レモン

平壌へ向かう途中、日本の横田基地に立ち寄ったポンペオ Andrew Hamik/REUTERS

<非核化が掛け声にとどまるなか、トランプ政権が金正恩に騙されたのではないかという証拠が次々と明らかに。今日から訪朝するポンペオ米国務長官は非核化を具体的に進められるか>

米朝首脳会談で北朝鮮が合意した非核化の目標に対して、アメリカが徐々に態度を軟化させている。マイク・ポンペオ米国務長官が7月6日から訪朝するが、アメリカはこれまでの「全部かゼロか」という姿勢から一歩後退した。

先月12日にシンガポールで実施された米朝首脳会談の以前、ポンペオは「CVID(Complete, Verifiable, Irreversible Dismantlement: 完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)」以外は受け入れない、CVIDが達成されるまで経済制裁は緩めない、と主張していた。

しかし今週国務省が出した声明では、韓国のアドバイスを受けて、非核化の基準は「FFVD(Final, Fully Verified Denuclearization:最終的かつ完全に検証された非核化)」と、幾分緩やかなものに後退している。

国務省は態度の軟化を否定する。国務省のヘザー・ノウアート報道官は本誌の取材に対して、「(アメリカの)北朝鮮に対する政策は変化していない。非核化を目指している」と語った。

トランプ政権は米朝首脳会談の成果を自ら称賛しているが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、厳密には「朝鮮半島の非核化に向けて努力する」という合意しかしていない。専門家によれば、シンガポールで交わされた合意文書は、過去に交わされた友好文書からほとんど前進していない。

しかし米情報機関の報告書などから、北朝鮮は核とミサイル施設の開発を継続し、トランプが言ったようには施設を破壊していない、と見られている。このためアメリカ側の多くの人々が、今後の非核化交渉の進展に疑問を持ち、このままでは北朝鮮が核を保有したままになるという深刻な結果をもたらすのではないかという疑念を抱いている。

米政府関係者はロイター通信に対して、これまでの交渉では大きな前進はなく、米朝共同声明の中のカギとなる文言を定義することすら困難だと語っている。

継続中の米朝交渉についてオランダ・アムステルダム在住のアメリカ人コンサルタント(グローバル安全保障、開発援助が専門)ベアトリス・マネシは、北朝鮮はこれまで国際的合意を何度も反故にしてきた過去がある、と指摘する。

「トランプ政権は、過去を認め現状を直視することを拒否している。トランプの安っぽい手品で世界平和が破壊されるかもしれない」と、マネシは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「被害少女知っていた」と米富豪記述、野党

ビジネス

ミランFRB理事、利下げ改めて主張 現行政策「過度

ビジネス

インタビュー:ラーメンで海外戦略加速、牛丼依存を分

ビジネス

ボストン連銀総裁「利下げのハードル高い」、インフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中