最新記事

サプリメント

認知症の改善効果をうたう健康サプリにご用心

2018年7月3日(火)15時20分
リック・シュミット (非営利調査報道サイト「フェアウォーニング」記者)

サプリ業界が急成長したのは、クリントン政権下で「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)」が成立した94年以降だ。この法律によって、医薬品に求められる大規模な臨床試験やFDAの認可なしでサプリメントを販売できるようになった。

当時のFDAは未認可医薬品の摘発を強化し、派手な強制捜査を行っていた。そうした流れのなかでDSHEAができ、俳優のメル・ギブソンが連邦政府の調査官に「ビタミン剤」を押収される広告まで制作された。当時のビル・クリントン大統領によれば、この法律はサプリメント規制に関する「良識的」な解決策だった。

20人だけで虚偽広告を監視

FDAによると、現在アメリカにおけるサプリ市場は年間370億ドル規模と推定され、流通しているサプリの種類はDSHEA成立当時の約4000から8万に増加した。法律の施行後、業界は政治力も付けた。「民意を反映する政治センター」の調べでは、これまでに政治家や関係省庁へのロビー活動に4400万ドル以上を注ぎ込み、選挙関連の献金額も2500万ドルに迫る(大統領選のあった16年だけで920万ドル)。

業界は政府への影響力を増し、サプリのリスクや副作用についての情報をラベルに入れるよう求める声を抑え込んでいる。業界内には大きなコネを持つリーダーもいる。例えばダニエル・ファブリカント。FDAのサプリメント部門の元責任者だが、現在は業界団体トップのナチュラル・プロダクツ協会のCEOだ。

しかも、サプリの虚偽広告を監視する米連邦取引委員会(FTC)には担当者が20人しかいない。「私はいつも『市場で売られているからといって効くと思うな』と言っているのだが」と、FTC広告局のリック・クリーランドは言う。「広告があまりに多過ぎて、現在の体制では全部に目を通すことなど不可能だ」

FTCが法廷に持ち込んだケースもあるが、消費者の保護にはあまり結び付いていない。

15年、FTCは15年分の記憶が30日でよみがえると称してビンポセチン配合のサプリメント「プロセラAVH」を販売していた業者から、140万ドルの民事制裁金を勝ち取った。もっとも、その頃までにプロセラの売り上げは1億ドル近くに達していたとされる。ちなみにプロセラは今も販売されているが、製造元のキービュー・ラボラトリーズ(フロリダ州)によれば、販売手法も経営陣も一新したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落800円超安、前日の上昇をほぼ帳

ビジネス

焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 

ビジネス

ソフトバンク、9月30日時点の株主に1対10の株式

ビジネス

ドイツ銀、第1四半期は予想上回る10%増益 投資銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中