最新記事

日本政治

LGBTへの日本の行政支援は「度が過ぎる」のか

2018年7月28日(土)18時40分
大橋 希(本誌記者)

「彼ら、彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」の部分は人権無視だと批判されているとおり。同性愛者を「子供をつくらず役に立たない」と迫害したナチスの思想とそっくりだ。麻生副総理もかつて、「ナチスの手口を見習ってはどうか」「ヒトラーの動機は正しい」というような発言をしているので、大先輩をまねたのかと思いたくなるが、杉田の主張は以前から同じ。

それを分かった上で自民党も彼女を17年10月衆院選の比例名簿に載せた。「私、間違ったこと言ってないよね?」と彼女が思うのも当然なら、二階幹事長が「いろんな人生観がある」とかばうのも当然だ。

杉田の主張で唯一まともに見えるのが、LGBTを一くくりにするのはおかしい、という部分だろうか。LGBは「性的指向」、Tは「性自認」で、異なるものであるのは確かだ。だがここで杉田は、LGBは「性的嗜好」と書く。同性愛は個人的趣味(嗜好)ではなく、恋愛対象の方向性(指向)の話なのでこれは完全な誤用。意図的な書き違えだろうが、自分に都合のいい議論に導くためにまやかしもいとわない姿勢には、すがすがしささえ感じる。

......と、丁寧に読んでみたら想像以上にひどかったので本人の事務所へ取材依頼したところ、「この問題については全ての取材をお断りしている」とのこと。説明を聞けなかったのは残念だが、これからの議員活動でどれほどの生産性を見せてくれるのか楽しみにしている。

<本誌2018年8月7日号「EU崩壊 ソロスの警告」掲載>

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感、10月は昨年8月以来の高水準に並ぶ

ビジネス

全国コアCPI、9月は+2.9%に加速 電気・ガス

ビジネス

ドイツ、29年にかけ計1400億ユーロ超の財政赤字

ワールド

トランプ氏、SFへの州兵派遣を中止 エヌビディアC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中