最新記事

日本社会

都心部でも見直される、お金を使わない「非貨幣経済」

2018年6月14日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

同じやり方で、47都道府県の非貨幣経済指数を計算してみた。<表2>は、高い順に並べたランキングだ。

maita180614-chart02.jpg

トップは鹿児島で、長野、高知がそれに続く。長野では、米を親戚や知り合いに譲渡する「縁故米」が盛んだという。上位には西日本の県が多く、地図にすると西高東低になる。

常識的には、非貨幣経済指数は農村県で高く都市県で低いと考えられるが、必ずしもそうではない。東京の値は、全国値を上回っている。都心部で不要物資を放出するフリーマーケットが多く開かれ、ITに強い若者が需要と供給を上手く結びつけて廉価の売買の場を創出していることなどが背景として考えられる。

「貰う」「共有する」「拾う」「助け合う」「育てる(自家栽培)」といった、貨幣を媒介としない非貨幣経済の効用を見直したい(鶴見済『0円で生きる―小さくても豊かな経済の作り方―』新潮社、2017年)。食品ロスに象徴される大量生産の無駄を活用できるし、人と人とのつながりが必然的に生じる。「お金を使わないと人間関係がどんどんできる。お金は協力的な人間関係を省略する」という、鶴見済氏の指摘は実に的を射ている。(毎日新聞、2018年5月18日)。

それは、煩わしい「濃すぎる」人間関係とは異なる。必要な時だけ助け合う、自発的な「緩い」人間関係だ。そんな人間関係は今、都市部でも求められている。

<資料:総務省『全国消費実態調査』(2014年)
    総務省『小売物価統計調査』(2014年)
    厚労省『国民健康・栄養調査』(2012年)


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中