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水中ではないのに子供が溺れる「乾性溺水」に注意

2018年6月1日(金)17時30分
カシュミラ・ガンダー

水遊び中の子供からは目を離さないのが鉄則だが、水遊び後も注意が必要 Wundervisuals/iStockphoto

<吸い込んだ水が原因で数時間~数日後に溺死することも――水遊び中だけでなく帰宅後も子供の異変を見逃すな>

プールや海で子供が溺れるのを防ぐ一番の方法は、保護者が常に目を離さないこと。では、水から出た後は? 実は水遊びを終えて家に帰宅してから、「溺れる」こともあり得る。

フロリダ州のレーシー・グレースは「乾性溺水」と呼ばれるその状態について、親たちに注意を呼び掛けている。同州サラソタで4歳の娘エリアンナがプールの水を飲んで乾性溺水となる事故が発生したためだ。

それは祖父母宅での水遊びが原因だった。4月のある土曜の午後、エリアンナはプールヌードル(細長いホース状浮き輪)の先端から水を吹いて遊んでいた。「彼女が口を付けたとき、ほかの子がもう一方の端からちょうど水を吹き、それが喉に入った」と、グレースは自身のフェイスブックに投稿している。

エリアンナは直後に嘔吐したが、30分後には「完全に元気」だったと母親は書く。月曜にかけてエリアンナは熱を出し、火曜日はほぼ一日中眠った。翌日は登園したが、また熱が出ていると両親に連絡があった。

「昨年読んだある記事を思い出した。テキサス州の男の子が、プールの水を吸い込み、適切な処置を施さなかった結果、亡くなった話だ」と、グレースは家族旅行の1週間後に死亡した4歳男児のことを記している。

両親は、単なる風邪であってほしいと願いながらエリアンナを病院に連れて行った。「今すぐ緊急治療室に搬送する必要があると医師から言われた。心拍はあり得ないほど高く、酸素レベルは低くて皮膚は紫色になっていた」と、グレースは言う。

検査結果は、プールの化学物質により炎症と感染が起こっていることを示していた。搬送先の病院でエリアンナは化学性肺臓炎と誤嚥性肺炎、肺水腫と診断され、人工呼吸器を装着した。

適切な治療で完治が可能

「乾性溺水」あるいは「二次溺水」と呼ばれる状態は医学用語ではないが、口から水が入り、水中に沈んではいないときに溺水の症状が起こることを指す。

乾性溺水と二次溺水は同じ意味で使われることもある。だが医療情報サイトのウェブMDによれば、乾性溺水は一般的に、水が肺には達していないものの気道でけいれんが起こり、呼吸困難な状態になることを言う。対する二次溺水は、水が肺に入り内膜を刺激した後に起こる合併症と関連付けられる。体液がたまり肺水腫を起こすと、呼吸困難を招く可能性もある。

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