最新記事

北朝鮮

トランプ政権から歓待を受けた金正恩の右腕、金英哲の黒い経歴

2018年6月1日(金)15時15分
ロビー・グレイマー

金英哲は2009~2016年、北朝鮮の工作機関でサイバーセキュリティーも担当する軍偵察総局のトップを務めた。その間、西側に対するサイバー攻撃や韓国への軍事攻撃に関与したと見られている。2012年に韓国で活動している北朝鮮のスパイネットワークが一斉逮捕された時には、短期間、降格させられたと言われているが、その後「復権」した。

元CIA分析官で現在ブルッキングス研究所のシニアフェローを務めるジュン・パクによると、金英哲は最高指導者となる金正恩の指導役を務めたという。「軍偵察総局は特に金正恩の指導役として非常に重要な存在で、そこで7年間局長を務め、金正恩の信頼を得たことから見て、金英哲は十分に職務を果たしたということだろう」

局長在任中に金英哲は韓国に対する2件の軍事作戦を指示したと言われている。2010年3月に韓国海軍の哨戒艦「天安」が沈没して兵士46人が死亡した魚雷攻撃と、同年11月の延坪島(ヨンピョンド)への砲撃で4人が死亡し19人が負傷した事件だ。

14年のソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃も金英哲が直接指示したと言われている。このサイバー攻撃は、同社が金正恩の暗殺を描いたコメディ映画『ザ・インタビュー』の全米公開直前に実行された。

最近の金英哲は、北朝鮮の外交活動の中心になっている。2月に開催された平昌冬季五輪では、北朝鮮代表団の一員として韓国を訪問し、閉会式に出席してイヴァンカ・トランプの近くで無表情で立っていた。一方のイヴァンカも金英哲に視線を向けることはなかった。

金英哲がポンペオと会談するのはこれが3回目となる。ポンペオは今年、2回秘密裏に北朝鮮を訪問し、身柄を拘束されていたアメリカ市民3人の解放を実現し、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の開催に向けて準備を進めている。

ドナルド・トランプ米大統領は先週24日、北朝鮮側の「激しい怒りとあからさまな敵意」を理由に、突然会談のキャンセルを発表した。しかしその後、態度を軟化させ、会談が開催されるかもしれないと発言している。

ホワイトハウスのジョー・ハギン大統領次席補佐官が率いる「先遣隊」チームは現在、シンガポールで米朝首脳会談の開催準備を進めている。一方、外交・安全保障担当の米政府高官は北朝鮮政府幹部と南北朝鮮を隔てる軍事境界線で協議を続け、会談の内容について議論している。

From Foreign Policy Magazine


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏首相、年金改革を27年まで停止 不信任案回避へ左

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ、中期目標引き上げ 7─9月期

ビジネス

FRB、年内あと2回の利下げの見通し=ボウマン副議

ビジネス

JPモルガン、四半期利益が予想上回る 金利収入見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中