最新記事

中国

イスラム教徒に豚とアルコールを強要する中国・ウイグル「絶望」収容所

2018年5月18日(金)20時02分
デービッド・ブレナン

ゼンスは、中国政府が2017年3月から拘束者数を急増させたと言い、収容所の建設に向けた73件の政府プロジェクトに1億ドル以上が投じられた証拠も提示した。陳全国・前チベット自治区党委員会書記は、2016年8月に新疆ウイグル自治区トップに就任した後、チベット自治区とよく似た「漢化政策」の陣頭指揮をとった。

中国政府がターゲットにしているのは、新疆のイスラム過激派だ。彼らは国家安全保障上の脅威で、中国各地の都市でテロ攻撃を繰り返しているからだという。その標的が、新疆ではイスラム教徒で多数派のウイグル族だ。「中国政府が言う『テロとの戦い』は、宗教や言語、民族的アイデンティティを封じ込める戦いへ変貌している」、とゼンスは報告書で述べた。

宗教に警戒

イスラム教徒だというだけで、当局は疑いの目を向ける。顔全体を覆うベールを着用したり、男性が長いひげを伸ばしたり、子どもにムスリム特有の名前を付けたりするのを禁止することで、中国政府はイスラム教徒のアイデンティティを踏み潰しにかかった。

彼らに共産主義思想を吹き込み、逆に分離独立主義を抑え込む目的で、新疆の住民世帯にわざわざ政府職員を派遣することもある。

習が「外国的」とみなすイスラム教やキリスト教のような宗教は、習政権が漢化と「社会主義的な革新的価値観」の体現を目指すなかで一層の圧力にさらされている。しかも新疆は、中国政府が数十億ドルの資金を投じる「一路一帯」構想の重要拠点とされているため、弾圧は容易に止みそうにない。

新疆は中国政府が保有する最先端の監視技術の実験場にもなっている、とゼンスは指摘した。そこで得た成果は、中国全土における「社会改造」に応用される可能性がある。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国経済運営は積極財政維持、中央経済工作会議 国内

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中