最新記事

米移民

2歳からアメリカで育ったのに強制送還?トランプが打ち砕く「ドリーマー」の夢

2018年5月16日(水)20時00分
アレクシス・トバル

筆者のアレクシス(中央)と姉のヤッツリ(右) Alexis Tovar

<幼少時に親に連れられてアメリカに到着した不法移民の救済制度をトランプが撤廃したため、アメリカで成功するために努力してきた移民の若者が窮地に陥っている>

私はアメリカで生まれた。姉もそうだと、ずっと思っていた。

ある日の午後、姉のヤッツリは台所で泣いていた。大学に進学できないというのだ。「私には滞在資格がないの」

当時12歳だった私は、そのとき理解した。姉は2歳からアメリカで暮らしているのに、アメリカで生まれた私のような特権は持ち合わせていないことを。

私はいつも姉に嫉妬していた。常に成績がよかったし、たくさんの友人がいた。生まれながらにアメリカの市民権をもつ私のことを、姉がどれほど嫉妬していたか、この日まで気付かなかった。

バラク・オバマ大統領は2012年、若い移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA=ダカ)を発表した。それは幼少時にアメリカに入国した不法移民に進学と就労の機会を与えるプログラムで、ヤッツリの人生を完全に変えた。

DACAのおかげで大学は卒業できたが

姉は車の運転を習い、旅をした。大学にも入り、苦学の末に昨年、卒業した。市民権がないので公的な奨学金をもらう資格はなかったが、2つの仕事をこなして学費を稼ぎながら、学業に打ち込んだ。アメリカで成功するために姉がいかに努力をしたか、私はこの目で見てきた。

DACAのおかげで姉は恐怖を感じなかった。そして私も、姉が強制送還される恐れはないと思っていた。ただ、この救済措置が絶対確実ではないことはわかっていた。恒久的な保護を提供する制度ではなかったからだ。

7カ月前、私たちの懸念が現実になった。ドナルド・トランプ大統領がDACAの打ち切りを発表したのだ。乱暴なやり方で、トランプは私の姉だけでなく約80万人の移民の若者を強制送還の危険にさらしている。

20年以上も故郷と思って暮らした場所が、ある日突然姉から奪われるなんて、私には受け入れられない。

姉が私の大学の卒業式に出席できないかもしれないなんて、想像もつかない。

DACAを打ち切るというトランプの行為は、残酷で非人間的だ。

それと同じくらい非道だったのは、「ドリーマー」(子供のときにアメリカにきた人々)が市民権を獲得する道を作ろうとした超党派の交渉をトランプがつぶそうとしたことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ人道財団へ3000万ドル拠出で合意

ワールド

パレスチナ国家承認は「2国家解決」協議の最終段階=

ワールド

トランプ氏、製薬17社に書簡 処方薬価格引き下げへ

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 関税措置
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中