最新記事

イギリス

人種問題で注目のロイヤルウェディング 英国黒人社会はどう見ている?

2018年5月16日(水)18時00分

前出のウィンドラッシュ世代の移民の多くが移り住み、黒人人口が多いロンドン南部のブリクストンのマーケットで今回の結婚について意見を聞くと、ほとんどの人が前向きに受け止めており、バラク・オバマ氏が米国初の黒人大統領になったことと関連づける人もいた。

このような反応は、2人が婚約後の今年1月にブリクストンを訪れた時の温かい歓迎ぶりにも見られた。ブリクストンは、1981年の人種暴動以降、荒廃した大都市圏の地区の代名詞のような存在となっていた。

「彼女のような人が王室に入るのは、この国にとって良いことだと思う」と、交通機関で働くノエル・デービスさん(60)は話した。

リアンヌ・フレミングさん(23)は、「彼女が多様な人種の血をひいているということで、特にエキサイティングになると思う。本当は、そんなに重要視されるべきことではないはずだ。でも歴史的背景を考えると、『本当にこれが実現するのか』といった反応も出る。そういう反応をしないですむのが本当だとは思うけれど」と話した。

前出のハーシュ氏は、若者たちがマークルさんを尊敬していると話す。

「彼らは今回の王室の婚礼に、過去にはなかったような関心を持っている」とハーシュ氏は話し、「なぜなら、自分たちや身の回りにいる人に似ている人(が当事者)だからだ。自分たちの親戚に似た母親を持つ人だからだ」と、説明した。

一方で、アンドリュース氏らにとっては、今回の結婚は現実がいかにひどい状況にあるかを示すものにほかならない。

「マークルは英国の『オバマ・モーメント』ではないし、そう扱われるべきではない。王子に選ばれることは、民主主義ではない」と、作家のレニ・エッドロッジ氏は、婚約発表直後にそうツイートした。

「人種差別があまりにひどく、あまりにも歴史的であまりに根深いため、私たちは(そうではないものは)どんなものでも求めてしまう」とアンドリュース氏。「だから、良い意味を持つと思われるシンボルを、持ち上げすぎてしまう。だが落ち着いて何が起き、何が変わったのかを分析すれば、(今回の結婚には)まったく意味がないことが分かる」

「根深い人種差別や失業と同様、王室はわれわれが直面する深刻な問題の一部だ。彼女は、問題の一部になるのであり、解決策になるのではない」と同氏は付け加えた。

しかし、ブリクストンの街を歩く人々の多くにとって、人種は今回の結婚の最も重要な点ではない。

「2人が愛し合っているとき、王室出身か一般人かは関係ない。愛こそが大事だ」と、最初に登場したウォルターズさんは話した。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

Jonathan Shenfield

[ロンドン 8日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る

ワールド

マクロン氏「プーチン氏と対話必要」、用意あるとロ大

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中