最新記事

韓国

「ブチ切れ大暴れ動画」の母も立件......ナッツ姫一家と日韓政治の闇【動画付き】

李明姫氏のパワハラ場面とされる動画のキャプチャ画像 JTBC News/ YouTube

<ナッツ姫一家の「始祖」はかつて日韓政治のフィクサーで、田中角栄元首相とも昵懇の間柄だった>

韓国警察は6日、大韓航空を傘下に置く有力財閥、韓進(ハンジン)グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長の妻、李明姫(イ・ミョンヒ)氏を暴行と業務妨害の疑いで立件したと明らかにした。韓国メディアは4月、工事現場で関係者を小突いたり書類をばらまいたりする人物の動画を公開し、李氏とみられると報道。警察が事実関係を調べていた。

李氏は、「ナッツ姫」こと長女のチョ・ヒョナ氏、そして「水かけ姫」こと次女チョ・ヒョンミン氏の母だ。

動画が撮影されたのは、グループ内のホテル建設現場だとされる。李氏とみられる女性は、女性スタッフの腕をつかんで引きずり回し、さらには逃げる彼女を追い掛けようとするのを男性作業員が必死にとどめた。すると怒りが収まらないのか、揚げ句の果てには作業員が持つ大量の書類を床にぶちまけた。

(参考記事: 【動画】「ブチ切れ乱暴狼藉」の韓国財閥夫人、警察沙汰に

何かとお騒がせの韓進ファミリーだが、姉妹の祖父でこの財閥の「始祖」である趙重勲(チョ・ジュンフン)が、かつて日韓政治の舞台裏で暗躍し、田中角栄元首相らと昵懇の間柄だったことは、今となってはあまり知られていない。

忘れられる韓国財閥のルーツ

第2次世界大戦が終わったとき、わずかトラック1台の運送屋の社長だった趙重勲氏は、田中角栄氏の盟友と言われた小佐野賢治(国際興業グループ創業者)氏の支援を受け、韓進を一大企業グループへと育て上げた。そして同時に、日韓の利権構造の調整役としても暗躍したのである。

(参考記事: 【日韓国交50年】岸信介から安倍晋三まで...首相一族の「在日人脈」と「金脈」

今となっては、このような解説が添えられた報道はほとんど目にしないが、時間の流れを思えば、それも自然なことなのだろう。

しかしサムスンせよロッテにせよ、このところ事件化した韓国の財閥はいずれもが、かつて「日韓癒着」と言われた両国関係の中で、発展の基礎を作ったものと言える。日韓関係においては、歴史問題を巡る葛藤が表出しているが、それもまた、日韓癒着の歪んだ利権構造の中で放置されてきたことが、問題の解決を難しくしている部分があるのだ。


「ナッツ姫」や「水かけ姫」の母親のパワハラ場面とされる動画 JTBC News/ YouTube

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ・英首脳が会談、軍事共同生産構想を発表

ビジネス

関税の影響「予想より軽微」、利下げにつながる可能性

ワールド

イラン、カタールの米空軍基地をミサイル攻撃 米側に

ビジネス

米総合PMI、6月は52.8に低下 製造業の投入価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中