最新記事

核開発

トランプ流「両面作戦」? イラン核合意破棄でも交渉可能

2018年5月2日(水)17時03分

4月20日、イラン核合意が崩壊の瀬戸際にあるとの報道は、まだ時期尚早かもしれない。写真は24日、ホワイトハウスで乾杯するトランプ大統領(2018年 ロイター/Carlos Barria)

イラン核合意が崩壊の瀬戸際にあるとの報道は、まだ時期尚早かもしれない。トランプ米大統領は、5月12日までにイランに対する経済制裁を再発動するかどうかの決断を下す。

もし制裁が再び発動されれば、2015年にイランと国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国との間で交わされたこの核合意は大きな打撃を受ける。

この核合意では、イランは自国への経済制裁の解除と引き換えに核開発の制限を受け入れている。オバマ前大統領は、イランによる核兵器保有を阻止するためにこの合意締結に踏み切ったが、トランプ大統領は、この合意には「致命的な欠陥」があると主張している。

仮にトランプ大統領が、欧米の政府当局者が取り組んでいる核合意の修正案を拒否し、制裁を再発動させたとしても、イランの原油輸出を狙い撃ちする米制裁の主要手段は直ちに発効する訳ではない。

そのため、原油市場や石油関連企業は、新たな米制裁に備えるための時間的余裕があるかもしれない。その間、外交官が制裁発効の回避に向けて尽力することも可能だ。

イランが制裁の再発動に強く反発しているため、実現は困難かもしれないが、5月12日以降でも交渉継続を可能にする方法が少なくとも2つある。

イラン核合意には、紛争解決条項が盛り込まれており、当事国から合意に違反したとの訴えがあった場合、それを検討するために少なくとも35日の期間を設定している。また、すべての当事国が合意するならば、この期間を延長することも可能だ。

そして、トランプ大統領が主要なイラン制裁策の再発動を決めた場合でも、法律により、イラン産の原油輸入を大きく削減しない国の銀行を制裁対象に加えるという、最も厳しい手段に踏み切るまでには、最低でも180日待たなくてはならない。

イラン側は、核合意の再交渉を拒否し、報復姿勢を示しているが、米国が核合意から離脱した場合の対応については、明確にしていない。

「米国が核合意から離脱した場合、イランが取り得る選択肢はいくつかある。米国の離脱に対するイラン政府の反応は、快いものではないだろう」とイランのザリフ外相は19日語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏GDP、異常気象で5%減の可能性 ECB幹

ワールド

中国、雇用下支えへ支援策 米との貿易摩擦長期化で対

ビジネス

米ドル、第1・四半期の世界準備通貨の構成比が低下 

ワールド

スコットランド警察、トランプ米大統領訪問に向け事前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 6
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中