最新記事

欧州

イタリア、ポピュリズムと極右の連立協議大詰め 経済公約はEUと衝突必至

2018年5月15日(火)09時36分

5月13日、イタリアでは、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の新政権樹立に向けた連立協議が大詰めを迎えつつある。写真は五つ星運動のディマイオ党首。ローマで4月撮影(2018年 ロイター/Max Rossi)

イタリアでは、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の新政権樹立に向けた連立協議が大詰めを迎えつつある。

ただ両党が打ち出した経済政策の公約は欧州連合(EU)の財政ルールと相容れず、履行するのは不可能ではないにしてもかなり難しいだろう。

公約として挙げられたのは、法人税と所得税の減税、福祉予算拡大、売上税の税率引き上げ中止、支給開始年齢の大幅な引き上げを定めた2011年の年金改革の撤回などだ。

3月4日の総選挙でどの政党も過半数を獲得できず、これまで10週間にわたって各政治勢力が連立に向けた駆け引きを続けてきた。選挙前は、五つ星連動と同盟の連携はあり得ない組み合わせで、万が一実現すれば懸念すべき事態だとの声が専門家の間で大勢だったが、両党はこの数日間の協議で、全く違うそれぞれの政策プログラムを、双方が受け入れ可能な「協定」へとまとめ上げた。

もっともその内容は、巨額の財政負担を伴う。つまり財政赤字はEUと合意した水準を大きく上回る恐れがあり、そうなると欧州委員会と新政権が衝突するのは避けられない。

同盟のサルビーニ書記長は12日、五つ星運動のディマイオ党首との協議を経て「われわれはイタリアが窒息しないようにEUと合意事項を再交渉する必要が出てくる」と発言した。

五つ星運動の目玉公約である低所得層向けのベーシックインカムを導入するには、年間約170億ユーロの費用がかかる。法人税と所得税の税率を一律15%にするという同盟の看板政策が実施されれば、税収は年800億ユーロ減少するとみられる。

年金改革撤回の財政コストは150億ユーロ、予定されていた売上税の税率引き上げをやめるにはおよそ125億ユーロが必要だ。両党は、政府が企業からの借り入れを返済するために特別な新通貨を発行することも検討している。

ロンドンを拠点とするシンクタンク、ユーロインテリジェンスを率いるWolfgang Munchau氏は「これらが実行されれば、現代におけるイタリア経済システムにとって最大の変革になる」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア「H20」は安全保障上の懸念=中国国営

ワールド

中国、米にAI向け半導体規制の緩和要求 貿易合意の

ワールド

北朝鮮、軍事境界線付近の拡声器撤去を開始=韓国軍

ワールド

米、金地金への関税明確化へ 近く大統領令=当局者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    メーガン妃の「盗作疑惑」...「1点」と語ったパメラ・…
  • 10
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中