最新記事

人道問題

ヒンズー教徒住民99人を虐殺! ミャンマーのロヒンギャには残忍な武装組織がいた

2018年5月24日(木)18時06分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ロヒンギャ族の武装組織に家族を虐殺されたヒンズー教徒たち (c) Al Jazeera English / YouTube

<国際社会が「民族浄化」と批判したミャンマーでのロヒンギャ族への圧政。だが、ロヒンギャ族は単なる被害者ではなかった──>

国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は5月23日、ミャンマーの少数イスラム教徒ロヒンギャ族の武装組織が、同じ少数派であるヒンズー教徒を女性や子どもも含め99人虐殺していたとする報告書を公表した。

ロヒンギャ族を巡ってはミャンマー国軍による虐殺、暴行、放火などの人権侵害で約70万人が難民として隣国バングラデシュに逃れて、国際社会がミャンマーへの批判を強めている。

しかしその一方で、ロヒンギャ武装集団がヒンズー教徒を虐殺していたことが明らかになり、アムネスティでは「国軍と同じくロヒンギャ側も人権侵害という点では非難されるべきだ」との見解を示している。ミャンマーの民族対立、宗教対立の根深い現状が明らかになった。

ヒンズー教徒の村を襲撃、村人を虐殺

2017年8月25日、ミャンマー西部のロヒンギャ族が多数住むラカイン州で警察施設がロヒンギャの武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」に襲撃される事件が起きた。

ミャンマー国軍はこれを契機にARSAとそのシンパそして一般のロヒンギャ住民への軍事掃討作戦を展開。暴行、略奪、レイプ、放火と数々の暴虐行為を起こし、国際社会から「民族浄化」と非難される事態に発展する。そして最終的に約70万人のロヒンギャ族がバングラデシュに脱出し、複数の難民キャンプでの避難生活を余儀なくされている。

ところが、このとき虐殺されたのはロヒンギャ族だけではなかった。

警察署が襲撃された昨年8月25日の午前8時ごろ、ラカイン州北部マウンドー郊外のヒンズー教徒が多く住むカ・マウン・セイク村にナイフや鉄の棒などで武装した黒装束の一団が侵入。女性や子どもを含むヒンズー教徒の住民を後ろ手に縛り、目隠しをして村の一角に集めた。金品を強奪した後、イスラム教に改宗することを約束した女性8人、子供8人を村の外に連れ出した後、男性20人、女性10人、子供23人(うち14人は8歳以下)合計53人の喉を切って次々と殺害したという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド首都で自動車爆発、8人死亡 世界遺産「赤い城

ワールド

トランプ氏、ジュリアーニ元NY市長らに恩赦 20年

ビジネス

ミランFRB理事、大幅利下げを改めて主張 失業率上

ワールド

台湾半導体「世界経済に不可欠」、防衛強化にも寄与=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中