最新記事

人道問題

ヒンズー教徒住民99人を虐殺! ミャンマーのロヒンギャには残忍な武装組織がいた

2018年5月24日(木)18時06分
大塚智彦(PanAsiaNews)



ミャンマーにおける人道問題の被害者と思われているロヒンギャ族。だがその武装組織はヒンズー教徒を虐殺していた...... Al Jazeera English / YouTube

この「ARSAによる虐殺事件」は、その後バングラデシュに逃れたヒンズー教徒のラジ・クマリさん(18歳)やフォルミラさん(推定20歳)など親族や兄弟を殺害された生存者からアムネスティ・インターナショナル関係者が直接聴取した証言、されに提供された写真の法医学専門家による鑑定などに基づいているという。

村人のヒンズー教徒に黒装束の男らは「お前たちは仏教徒と同じ異教徒であり、我々とともにここで暮らすことはできない」と話していたことやロヒンギャ語を話していたことなどから男らはARSAのメンバーであることは間違いないと指摘している。

またARSAのメンバーは生存者らに「何かを聞かれたらミャンマー国軍に攻撃されたと言え。さもないと殺すぞ」と脅迫したという。

さらに報告書ではカ・マウン・セイク村近くのバウ・キャル村でも同日、女性や子どもを含むヒンズー教徒46人が行方不明になっており、いまだに消息がわからないことからARSAによって全員が殺害されたものと推定している。

ヒンズー教徒の集団墓地も発見

2012年頃にミャンマー治安組織の弾圧に抵抗する目的結成されたとされるARSAは結成当時総勢約100人規模で小火器や刃物、手製爆弾で武装していた。2016年10月に国境検問所などを襲撃して存在感を誇示。その後、勢力を拡大し2017年8月25日の警察襲撃などには国軍推計で約6500人が参加したとされている。

ARSAは「政府のアウンサンスーチー(国家最高顧問兼外相)によるARSA掃討作戦は2017年9月に停止したという説明は嘘で現在もロヒンギャ族女性や子供への無差別殺人は継続されている」としてヒンズー教徒の武装攻撃を正当化している。

こうしたことからミャンマー政府は2017年8月の警察署襲撃事件の発生以降、ARSAによる事件をたびたび指摘しているにも関わらず、国際社会の注目は国軍のロヒンギャ族への人権侵害に集まっていた。

2017年9月24日にミャンマー国軍は報道陣立会いの下、現地で虐殺されたヒンズー教徒の捜索作業を実施、45人の遺体を4つの集団墓地で発見し、ARSAの犯行を裏付けるものとして批判を強めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中