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韓国、アベンジャーズ1000万人の大ヒット その影でヤバすぎる誤訳問題が炎上

2018年5月19日(土)23時10分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


違法アップロードで翻訳家デビュー

かつてフィルム時代は、翻訳家がセリフ等を翻訳した後、それをもとにフィルムに直接傷をつけるようにして画面に字幕を載せていた。一度載せてしまうと削られてしまっているので修正するのは難しい。筆者も駆け出しバイヤーだった時代、買い付けた映画の字幕テストの為1本だけ出来上がった字幕の載った初号フィルムのチェックをしに字幕制作会社の映写室に通ったものである。

しかし、時代はデジタルに移行しフィルムからデータでのやり取りに変わった。字幕作業もデータ上で行う事となった。また、語学に長けた世代も増え、オンライン上に自分でオリジナルの翻訳字幕を付けて不法アップロードを行う人もいる。なかにはプロ顔負けの能力で配給会社から声がかかり、そのまま翻訳家デビューしたという強者もいる。

今回、何か問題が起きた時の熱しやすく冷めやすい韓国の国民性や、発達したネット社会などにより騒動が想像以上にヒートアップしてしまった。この「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」誤訳騒動も映画の上映終了と共に数か月後には忘れ去られてしまうことだろう。パク氏が引き続きアベンジャーズの続編。また、その他人気の高い洋画を翻訳していくことになるのかはわからないが、英語教育のため幼少から留学にいかせたり、また不法ダウンロードの横行で一般人も字幕を付け容易にオンラインにアップできる現代の韓国。このままでは素人に字幕センスで追い抜かれてしまう日も近い。

字幕は観客が外国の映画を見た時の良し悪しを決める大きな要素の一つだ。翻訳家は、その作品の裏に何千何万もの役者・スタッフや、配給買い付けと宣伝の職員がいることを忘れず、プロらしく仕事を全うしてもらいたいと願わずにいられない。

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