最新記事

シリア情勢

中途半端だったシリアへのミサイル攻撃

2018年4月16日(月)18時45分
コラム・リンチ、エリアス・グロル、ロビー・グレイマー

ホワイトハウスが13日に出した報告書では、ソーシャルメディアで流された証拠や非政府組織(NGO)の声明、ドウマでの塩素ガスの使用を示す動画や写真が取り上げられている。

また、化学兵器攻撃があった際にシリア政府軍のヘリコプターがドウマ上空を旋回しているところが目撃されているとし、「これらのヘリコプターから樽爆弾が投下されたことは多数の目撃情報から裏付けられている。樽爆弾はシリア内戦を通じて、一般市民を無差別に狙うのに使われてきた戦術だ」とも指摘した。

複数の米高官は14日、塩素ガスがドウマで使われたことを確信しているだけでなく、サリンも使われたと見ているが、それを裏付けるだけの十分な証拠がないと語った。報告書では、現地で活動する医師や援助団体が「サリンに触れたと考えられる症状が見られたと伝えている」と指摘している。

米政府によればシリアは昨年、トランプが命じた1年前のミサイル攻撃にも関わらず何度も化学兵器を使用した。11月18日にはダマスカス近郊のハラスタで反体制派に向けてサリンを使ったとみられる攻撃も行われた。

米仏が挙げた証拠とは

アメリカとロシアは2013年9月、シリアの化学兵器をすべて廃棄させることで合意した。だが化学兵器禁止機関(OPCW)などの国際機関から派遣された査察官はすぐに、シリアが猛毒の神経剤であるサリンやVX、ソマンなどの申告義務を怠っていたことに気づいた。OPCWと国連は報告書で、シリア政府軍が塩素ガスやサリンなどを使用した事例が多数あったと断定。さらに、テロ組織ISIS(自称イスラム国)もシリアでの戦闘で化学兵器の1つであるマスタードガスを使用した、と結論づけた。

ヘイリーは4月13日の国連安保理の会合で、アメリカがシリアを攻撃した昨年4月以降に発生した複数の事例を含め、7年間にわたるシリア内戦で同国は最低でも50回は化学兵器を使用した、と主張した。フランスは攻撃の理由として、シリアが2017年4月4日以降に化学兵器を44回使用した、とする疑惑を挙げた。ほとんどの事例で塩素ガスが使われており、そのうち11回は仏当局が使用を断定した。仏情報機関は、2017年11月18日に東グータ地区ハラスタで「神経剤」が使われた、と確信している。

今回アメリカが限定的な攻撃にとどめた理由は2つある。1つは、米国防省が民間人の犠牲を最小限に抑えるために攻撃対象を絞ったから。もう1つは、ロシアと直接の交戦に発展するのを避けるため、ロシア軍兵士や戦闘機などを攻撃対象から外したからだ。

なにより、シリアが増強している化学兵器の製造能力を削るには、もっと徹底的な軍事作戦が必要だった。国連安保理の専門家パネルが最近まとめた内部報告書は、シリアは北朝鮮などから大量の物資を輸入して、化学兵器の製造能力を増強していると指摘したばかりだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラで中国の「有害な」取引阻止、米エネルギー

ワールド

原油先物は小幅高、米・イランの緊張巡る懸念で

ワールド

米財政赤字、今後10年でさらに拡大 減税・移民減少

ビジネス

アサヒHD、1月のビール類売り上げ11%減 システ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中