日韓企業、バッテリー用資源獲得で中国追撃 カギは南米「リチウムトライアングル」
一方中国の企業は、オーストラリアやカナダ、アフリカで積極的に供給源を求めてきた。それでもチリのリチウム産業では大きな足場を築くことに苦労している。チリの当局は、中国の天斉リチウムがチリのリチウムメーカーSQMの株式32%を取得する計画を差し止めた。天斉はチリの競争当局と交渉中だ。
日韓の企業はSQMなどと長期契約を結んでおり、天斉による株式取得が認められれば、せっかく培った関係が揺らぐかもしれない。バンアルフェン氏は、取得は「日韓の企業を苛立たせるだろう」と話す。
こうした中で韓国のサムスンSDIとポスコは、SQMと米アルベマールからのリチウム供給を割安で受ける代わりに、チリにバッテリー材料工場を建てると約束した。ロンドンのコンサルタント会社のロバート・ベイリス氏は「チリの工場は韓国や中国より高くつくかもしれないが、すべては供給確保のためだ」と指摘する。関係者によると、そうした工場設立の投資で得られる本当の見返りは、チリのリチウム産業に足場を築き、将来的にその足場を拡大できる可能性だという。
チリ政府は特に扱いが難しく、鉱山開発への新規参入も拒んできた。ただ投資家は、いくつかの小さな案件が参入の可能性を示していると見る。オーストラリアのリチウムパワーインターナショナルと、カナダのベアリングリチウムによるプロジェクトは珍しくチリの輸出許可を獲得した。
またアルゼンチンやカナダには、急げば投資できる機会がある。米リチウム大手FMCに助言するコンサルタントのジョー・ローリー氏は、アルゼンチンやカナダの新興リチウムプロジェクトは今のところ「中国の参入が限定的だ」と説明した。
(Dave Sherwood and Nicole Mordant記者)