最新記事

朝鮮半島

一国二制度「連邦制統一国家」朝鮮?──半島問題は朝鮮民族が解決する

2018年4月3日(火)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

金正恩委員長は何を狙っているのか?(2017年4月、太陽節の閲兵式で) Damir Sagolj-REUTERS

今年元旦に金正恩委員長が「半島問題は朝鮮民族が解決する」と宣言したのは、南北朝鮮民族による一国二制度「連邦制統一国家」建国を示唆しているのではないのか。北朝鮮のもくろみと韓国の思惑、そして米中は?

中朝双方とも非核化は「朝鮮半島」を対象

今年元旦、金正恩委員長は「朝鮮半島問題は朝鮮民族が解決する」と宣言して、南北融和政策が始まった。一方では「日米は100年の宿敵、中国は1000年の宿敵」と盛んに書き立てながら、その「1000年の宿敵」である中国を電撃訪問し習近平国家主席と握手した。

習近平は「過去にはいろいろあったが、変化するものである」として、水に流す意図を表明している。それは「朝鮮戦争で最大の敵国であった韓国と国交を樹立し、中韓経済交流を推進している中国」を1000年の宿敵と位置付けながら、結局は自分自身も結局はその韓国と手を結び、南北融和を図っていくことに対する「挨拶」ではあった。

しかし、南北融和の程度は、ただ単に「喧嘩をせずに仲良くやっていく」というレベルの話ではなく、中国と香港のような「一国二制度」形式による「南北朝鮮の統一国家」を建国していくことを目指しているのではないかと思われるのである。

金正恩が非核化を論じるときに、必ずその前に「朝鮮半島の」という限定語が付いており、決して「北朝鮮の非核化」などという言葉は使わない。

そして習近平もまた非核化を論じるに当たり、決して「北朝鮮の」という限定語は使用していないのである。

中国にとっての中朝首脳会談のメリットは、もちろん中国が一貫して主張してきた「双暫停(中朝双方が暫定的に軍事行動を停止し、対話のテーブルに着け)」戦略に北朝鮮が従ったことではある。なぜなら中国は朝鮮半島で戦争が再発してほしくない。中国の軍事力はアメリカには遥かに及ばないので戦争となれば中国が劣勢になり、それは中国の一党支配体制維持を破壊するからだ。

しかし、もし南北が対話に入り、鄧小平が唱えてきた「一国二制度」体制に入ってくれたとすれば、「双暫停」とは比較にならないほどのメリットがある。

それは「朝鮮半島の非核化」につながり、在韓米軍は半島から撤退せざるを得ないところに追い込まれるからである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 自由取り戻すと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中