最新記事

中国

安倍首相の対北政策と日米首脳会談を酷評する中国

2018年4月24日(火)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2018年4月21日、 米国から帰国後、自身が主催した「桜を見る会」における安倍首相 Toru Hanai-REUTERS

北の「平和路線」宣言に対する安倍首相の発言と、日米首脳会談を急いだ行動を中国は徹底酷評。北の危険度を「国難」として自分のスキャンダルをかわす根拠を失ったとし、拉致問題はなぜ自分で解決しないのかと糾弾。

金正恩委員長の核・ミサイル凍結に対してCCTVが安倍批判

金正恩委員長が20日、核実験の凍結とミサイル発射の中止などを宣言したことに関して、中国の中央テレビ局CCTVは連日のように特集を組んでいるが、その中で長時間を割いて、安倍首相の一連の言動に膨大な時間を割いて解説した場面がある。

まず、その時の論説委員の言い分を見てみよう。

*以下は論説委員の解説の要旨をそのままご紹介する。( )内は筆者*

安倍は昨年、北朝鮮の核実験やミサイル発射などを「国難」と位置付けて解散選挙を断行。その時は希望の党の失敗に助けられて大勝したが、しかし今こうして北朝鮮が核実験やミサイル発射の中止を謳い危機が無くなると、「国難」の根拠を失い、安倍はうろたえている。

そのために、「国難」と位置付けた自分が正しかったことを証明しなければならず、必死で「圧力と制裁の強化」を叫び続けている。

森友ゲート、加計ゲート、公文書改ざんゲート、自衛隊日報ゲートそして今度は財務省セクハラゲートと、満身スキャンダルにまみれて支持率も日々低下している安倍は、「国難」が正しかったことを何としても主張して政権維持を図ろうとしているのだ。(ここでいう「ゲート」は「ウォーターゲート」以来の呼称で、「大事件」を中国では指す。)

(北)朝鮮は中朝首脳会談を皮切りに南北首脳会談を行なおうとしており、なんとトランプが米朝首脳会談に応じてしまった。中露の対朝(北)戦略は同じであり、朝露首脳会談は時間の問題だ。ここで取り残されているのは安倍だけである。だから安倍の焦りは尋常ではない。

自国に拉致問題を抱えているというのなら、独自の対朝(北)戦略を遂行すればいいのに、安倍は「常に100%、トランプと共にある」と主張して、虎の威を借る狐のように行動してきた。あんな気まぐれなトランプと100%共にいたりなどするから、突然、梯子を外されてしまう。

そこで慌てて、拉致問題に関して韓国の文在寅に頼んだり、トランプに頼んだりしているが、実に哀れだ。

中国は初めから「6者会談(6ヵ国協議)に拉致問題を導入するな。自国の問題は日朝両国間で解決せよ」と日本に何度も忠告してきた。しかし日本は自国民の問題を後回しにしてアメリカ追随を優先してきた。常に他国頼みなのである。そのツケが今まわってきたに過ぎない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦合意巡り13日に国際首脳会合、トランプ氏ら

ワールド

北朝鮮が軍事パレード、新型ICBM公開 金氏は海外

ワールド

トランプ氏、心臓年齢は実年齢マイナス14歳 健康状

ワールド

米政府、大規模な人員削減開始 政府機関閉鎖10日目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決」が話題に 「上品さはお金で買えない」とネット冷ややか
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収された1兆円超は誰のもの? 中国は「返還」要求
  • 4
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 5
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 6
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 7
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 8
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 9
    【クイズ】ノーベル賞を「最年少で」受賞したのは誰?
  • 10
    サウジの伝統食「デーツ」がスーパーフードとして再…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 8
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中