最新記事

ビジネスマン

トランプ、武器輸出増狙いセールス活動 「バイ・アメリカン」の内幕

2018年4月21日(土)12時26分

4月17日、トランプ米大統領(中央)は1月、クウェートのサバハ首長との電話会談で、100億ドル(約1兆円)規模に上る戦闘機の購入契約を進めるよう圧力をかけた。ミズーリ州のボーイングで3月撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は1月、クウェートのサバハ首長との電話会談で、100億ドル(約1兆円)規模に上る戦闘機の購入契約を進めるよう圧力をかけた。同契約は1年以上、頓挫していた。

トランプ氏は、米国第2位の防衛機器大手ボーイングのために動いていた。複数の関係筋によれば、同社の軍用機部門にとって極めて重要な同契約がたなざらしにされ、暗礁に乗り上げていることにボーイングは業を煮やしていた。

これまで詳細が明らかになったことはなかったが、トランプ氏は、大統領執務室からの直接介入という、米国大統領として異例の行動に出た。大規模な武器売買契約の締結を個人的に後押ししたのだ。

世界各国首脳とのプライベートな電話会談や公式会談の中で、トランプ氏はどの歴代大統領よりも、米国の防衛産業を売り込むセールスマンとして活動していると専門家は指摘する。

人権活動家や軍縮派の懸念をよそに、トランプ氏個人によるこうした役割は、すでに世界の武器取引を支配する米国を、さらに大きな武器商人へと押し上げようとする大統領の決意の表れだと、米当局者は明かす。

トランプ政権は今週、米国製武器輸出の拡大と大型化を狙った、新たな「バイ・アメリカン(米国製品を買え)」イニシアチブを発表する。政府が完全に後押しすることによって、こうした取り組みは強化されることになる。戦闘機やドローンから艦船や迫撃砲に至るまで、軍事品の米輸出規制が緩和されると当局者は言う。

業界筋が19日にも発表されると語る同イニシアチブでは、より多くの国が、より迅速な契約承認を得ることができるガイドラインを提示。何年もかかることが多い契約締結プロセスを数カ月で終えることが可能になるという。

複数の関係筋によると、トランプ政権の閣僚に対し、主要な武器契約を結ぶ「クローザー」として活動するよう要請。また、米国製武器を売り込むため、政府高官も、国際兵器見本市などにこれまで以上に派遣されるようになる。

さまざまな高性能兵器を、より広範囲の外国政府に売り込むことにより、兵器が悪人の手に渡ったり、中東や南アジアのような地域の暴力を刺激したりするリスクが高まる恐れがあると、人権活動家や軍縮派は警鐘を鳴らす。

トランプ政権は、同イニシアチブの主な目的について、勢いを増すロシアや中国の武器メーカーに対抗するため自国の防衛企業を後押しし、国内雇用をさらに創出すべく、武器売却による経済的恩恵にこれまで以上に重点を置くことだと強調している。

この新たなイニシアチブは、ある特定の武器契約において、時に効果的な「拒否権」として発動される人権保護規制を軽減する意図があると、トランプ大統領の側近の1人は匿名で語った。

「この政策は、国家的、経済的な安全保障上の利益に寄与する武器移転について、米国政府の全資源を動員してバックアップすることを目指している」と、あるホワイトハウス当局者は説明する。

「武器移転には重大な人権的影響を伴う可能性について、われわれは自覚している。この政策によって、現行の法的要件や規制上の要件が変更されることはない」とこの当局者は語った。

同政策の主な立案者の1人は、対中強硬派のナバロ通商製造政策局長だ。武器輸出を強化するという同氏の主張に異議を唱える人は、ホワイトハウス内でほとんどいないと、複数の当局者は話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値に迫る、利下

ワールド

クアッド外相会合、7月1日に開催=米国務省

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、対ユーロ・ポンドで21年以

ワールド

EU首脳、ガザ即時停戦を要求 イスラエルの合意順守
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中