最新記事

貿易戦争

空自F2後継機、米ローキードがF22・35ベースの開発打診 日本の仕事激減が再び?

2018年4月20日(金)17時33分

4月20日、航空自衛隊の「F2」戦闘機の後継に、米空軍の「F22」と「F35」両方を土台にした機体を開発する案が浮上していることが分かった。写真はF35。イスラエルで昨年12月撮影(2018年 ロイター/Amir Cohen)

航空自衛隊の「F2」戦闘機の後継に、米空軍の「F22」と「F35」両方を土台にした機体を開発する案が浮上していることが分かった。両機を手がける米ロッキード・マーチンが、日本政府に非公式に打診した。門外不出とされてきたF22の高性能技術を得られることから、日本が米国との共同開発に踏み切る可能性が高まった。

日米の複数の関係者によると、ローキードはF22の機体に、F35の電子機器類やステルス技術を組み合わせた戦闘機の開発案を日本の防衛省に伝えた。ロッキードは米政府と議会の認可を得た上で、夏までに正式に提案する。

双発エンジンのF22は高いステルス性と制空能力を兼ね備え、今も米空軍史上最高の戦闘機とされる。日本は一時期輸入を模索したが、米議会が認めなかった。トランプ政権はこのほど米国製兵器の輸出を緩和する方針を打ち出しており、今回は認可される可能性がある。

F2後継機である「F3」の国産を目指していた日本は、三菱重工業 <7011.T>を共同開発のまとめ役に、IHI <7013.T>が手がけるエンジンや、高性能半導体を使った三菱電機 <6503.T>のレーダーをなどを活かしたい考え。「F22とF35のハイブリッド機で、どちらの戦闘機よりも高い性能が期待できる」と、関係者の1人は言う。

一方で、日本には30年前に米国とF2を共同開発したときの苦い経験がある。当初は国内開発を目指したが、米国の「F16」を土台に日米で開発することが決まり、仕事量の4割を米国に保証することとなった。米国は戦闘能力を左右する基本ソフトウエア(ソースコード)も日本に供与しなかった。

日本側は自分たちが主導権を取れるかどうか、自国企業が十分に参画できるかどうか、米側がソースコードを開示するかどうか、重要技術が移転されるかどうかなどを見極める。F22はコスト増で生産中止に追い込まれたことから、調達費が膨らむことも懸念している。

空自のF2は2030年ごろから退役が始まる。防衛省は今夏までに国産、国際共同開発、完成機輸入の中から調達方法を決めるとし、今年3月にはロッキード、米ボーイング、英BAEシステムズに対し、共同開発に必要な情報提供を呼びかけた。ボーイングとBAEも夏までに日本に案を提出する。

(久保信博、ティム・ケリー)

[東京 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    悪夢の光景、よりによって...眠る赤ちゃんの体を這う…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中