最新記事

米朝首脳会談

北朝鮮「核放棄」は望み薄 金正恩は長期戦の構えか?

2018年3月29日(木)17時34分

3月28日、北朝鮮の非核化に注目が集まっているが、専門家は過去の経緯から実現に懐疑的だ。写真は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。平壌で12月撮影。KCNA提供(2018年 ロイター)

北朝鮮の非核化に注目が集まっているが、専門家は過去の経緯から実現に懐疑的だ。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と今月初めに会談した韓国特使団によると、金委員長は非核化の用意があると言明し、トランプ米大統領とできるだけ早く協議したいと述べた。

金委員長と今週会談した中国当局者も、金委員長から非核化の誓約を得たとしているが、金委員長の訪中を報じた北朝鮮の国営メディアは、これまでのところ核問題には言及していない。

核兵器は、北朝鮮が長年かけて開発してきた「正義の秘刀」(国営メディア)。金委員長にとって身の安全の保障となっているだけでなく、体制の正当性と権力の維持に不可欠で、放棄を決めれば政策の劇的な転換となる。弾道ミサイルの発射実験では記念碑が建てられ、開発にあたる科学者は国民の英雄だ。

アナリストは、金委員長が突然核を放棄するとは考えていない。自身が勝利したという印象を国民やエリート層に与えられるよう、のらりくらりとした長期的なアプローチを取るだろうとみている。

ジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮関連ウェブサイトの専門家、マイケル・マッデン氏は「金委員長は国民に何らかの譲歩を迫る必要がない。非核化は実現までに最低でも10年かかるから、なおさらだ」と話す。他国との交渉では「1つか2つの大きな譲歩に応じるのではなく、小さな合意をいくつも積み重ねていく姿を描いていると思われる」という。

米の譲歩が不可欠

過去に北朝鮮との交渉にあたった韓国の複数の元当局者は、政策の大転換は困難だが、実現不可能ではないとみている。それは金委員長が国民に誇れるような、大幅な譲歩を米国から引き出せた場合だ。

元韓国統一相の金炯錫氏は「金委員長は核兵器保有によって米国と国際社会を降伏させたというストーリーを広めたいのだろう。話し合いが順調に進んで制裁が解除され、北朝鮮経済は上向く。そうなれば金委員長の非核化の決断は国民の理解を得て、強い支持が得られるだろう」と述べた。

ただ、トランプ政権はこうした展開を見込んでいない。次期大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就くボルトン元国連大使は最近、トランプ氏は近く開く見通しの金委員長との首脳会談で、北朝鮮になるべく早く核開発を止めさせることに焦点を絞るはずだと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予

ワールド

中国、EU産ブランデーに最大34.9%の関税 5日

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中