最新記事

日本社会

就職氷河期世代「ロスジェネ」が日本の人口動態に与えたインパクト

2018年3月29日(木)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

年収もかなり減っている。ロスジェネは2012年では30代だが、この年の30代男性の年収中央値は392万円(総務省『就業構造基本調査』)。20年前の1992年の445万円と比べると53万円も減少した。30代男性の年収中央値が400万円を超える県に色をつけた地図を作ると、<図2>のようになる。

maita180329-chart02.jpg

1992年は29県だったが、2012年では9県しかない。「失われた20年」の変化がはっきりと表れている。これは税引き前の年収なので、手取り年収でみたら事態はもっと苦しいものになる。

ロスジェネという特殊な世代の要因かもしれないが、それだけではないだろう。加齢と共に昇給する年功賃金は薄れている。今年の夏に2017年の『就業構造基本調査』のデータが公表されるが、上記の地図はほぼ真っ白になっているかもしれない。

収入が減っているので,子どもの教育費負担や在学中に借りた奨学金返済ができなくっている人も少なくない(奨学金破産)。とくにロスジェネの間でこういう悲鳴が多く上がっている。

教育費の大半を親に払わせる、高等教育の学費をローン(貸与奨学金)でまかなわせて後から返済させるというのは、年功賃金を前提としたシステムだが、その実態は崩壊しつつある。そこで、高等教育の無償化や給付型奨学金が導入されることになった。

ロストジェネレーションは、これまでのやり方が通用しない最初の世代だ。団塊ジュニアより少し下の世代で、人数的にも多い(<図1>参照)。四半世紀後にはこの世代も高齢期に達するが、社会保障制度は抜本的な見直しを迫られるだろう。そうした意味では、社会を変えるポテンシャルを秘めた世代でもある。

<資料:総務省『人口推計年報』
    総務省『就業構造基本調査』

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中