最新記事

核開発

北朝鮮の対話姿勢に日本政府は慎重な見方 「圧力続ける」と菅官房長官

2018年3月7日(水)15時59分

3月7日、日本政府は北朝鮮が米国との対話に前向きな姿勢に転じたことに対し、これまでも非核化の約束をほごにしてきたとして、慎重な見方を崩していない。菅義偉官房長官は会見で「対話のための対話では意味がない」と従来の発言を繰り返し、最大限の圧力をかけ続ける方針を示した。写真は首相官邸で昨年5月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

日本政府は北朝鮮が米国との対話に前向きな姿勢に転じたことに対し、これまでも非核化の約束をほごにしてきたとして、慎重な見方を崩していない。菅義偉官房長官は7日午前の会見で「対話のための対話では意味がない」と従来の発言を繰り返し、最大限の圧力をかけ続ける方針を示した。

北に猶予期間

「忘れてならないのは、北朝鮮は過去何度も同じように核の放棄を半ば約束し、実際は核開発をずっと続けていたことだ」──韓国政府による南北会談開催の発表から一夜明けた7日午前、登庁した小野寺五典防衛相は記者団にこう語った。

1990年代初めに北朝鮮の核開発疑惑が浮上して以降、米国をはじめとする国際社会は、核開発放棄と引き換えに北への経済援助を繰り返してきた。実際には開発は続き、北朝鮮は2017年9月に6回目の核実験を行い、大陸間弾道弾(ICBM)用の水爆の開発に成功したと発表した。同年11月には新型ICBMとするミサイルを発射した。

日本の政府関係者からは、今回の動きも核・ミサイル開発を進めるための時間稼ぎと懸念する声が出ている。東アジア情勢に詳しい日本の元外交官は「4月末に南北首脳会談を開くことに合意したことで、北朝鮮は1、2カ月の猶予期間を手に入れた」と話す。「誰も北朝鮮内の開発状況を検証できない」と、同氏は言う。

韓国に早期の説明促す

それだけに日本政府は、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動をみせることが先決と訴える。小野寺防衛相は「意味ある対話を行うには、北朝鮮が完全で検証可能な、不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄にすることを約束し、非核化に向けた具体的な行動を起こす必要がある」と語った。

日本は韓国政府から、訪朝に関して早期に説明を受けたい考えだ。菅官房長官は「韓国当局とはすでにそれぞれの立場で意思疎通を始めているが、特使派遣についてできるだけ早期に(話をすることで)調整中」と述べた。その上で、ソ・フン(徐薫)国家情報院長が訪日する方向で調整していることを明らかにした。

(久保信博、中川泉、リンダ・シーグ)

[東京 7日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中