最新記事

東南アジア

クロヒョウ食べて逮捕のタイ建設会社社長が、ミャンマー原生林に道路建設

2018年3月8日(木)14時31分
大塚智彦(PanAsiaNews)

その後一時同社長の消息が途絶え、「海外逃亡説」が流れたが、ITD社は「国内の建設現場を視察していただけだ」と海外逃亡を否定している。

ネットにアップされた逮捕時の画像には、テントの前で警察官に囲まれたプレムチャイ社長、動物の皮、クロヒョウの遺体、スコープ付きのライフル銃などが写っている。

クロヒョウの漫画、イラストで批判

タイ国内では、密猟しながら保釈金で釈放され、容疑者の身分なのに高速道路建設計画を発表するなど、富裕層に甘い治安、司法当局を皮肉って街中に「クロヒョウ」の落書きやインターネットにイラストや漫画が書き込まれるケースが増えている。

タイ市内では落書きを当局が発見しては即座に消しているが、そのそばから新たに落書きされるなど、国民のプレムチャイ社長と警察に対する不満がクロヒョウの形になって爆発しているといえる。

ミャンマー側も高速道路建設計画自体はダウェイ経済特区の発展に欠かせないとの立場から反対はしていないものの、プレムチャイ社長の関係する建設会社には難色を示している。豪ABC放送は「タイの法律を守れない人物が外国であるミャンマーの法律を遵守するとは思えない。環境破壊や野生動物密猟の実績のあるITD社を今後はブラックリストに載せるべきだ」というミャンマーの権利擁護団体の代表の声を報じている。

今後の焦点は、逮捕容疑の裁判が公正に開かれて法の裁きをプレムチャイ社長が受けるかどうか、高速道路計画が当初の予定通りにITD社が請け負って行われるのかどうかの2点に絞られているが、タイマスコミの間では、裁判はうやむやになり、高速道路は予定通り、と悲観的な見方が有力だ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、10月は50 輸出受注が4カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中