最新記事

貿易戦争

トランプ、中国製品へ最大6.3兆円規模の関税を課す大統領覚書に署名

2018年3月23日(金)10時38分

3月22日、トランプ米大統領は、中国の知的財産権侵害を巡り、最大600億ドル規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名した(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ米大統領は22日、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして、最大600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名した。

これを受け、米通商代表部(USTR)は関税対象となる中国製品の品目リストを作成する。ハイテク製品を中心に約1300品目となる見通し。対象リスト作成後、30日の審査期間も設け、業界ロビイストや議員らに意見を求める。最終的な関税措置の実施はその後となる。

またトランプ氏は、中国の国有企業やファンドによる米ハイテク企業買収を阻止するため投資も規制する方針で、財務省が60日以内に詳細を詰める。

中国が今回の措置に対し反応する余地も設け、中国が即時に報復措置に動くリスクを低減させる。

トランプ大統領は署名に当たり、中国を「友好国とみなしている」とし、「中国と対話しており、交渉は継続中だ」と語った。同時に、不公正な貿易が米国の雇用喪失の主因との考えをあらためて表明した。

これに対して在米中国大使館は、米国との貿易戦争に「最後まで戦う」と強く反発。崔天凱駐米大使は「われわれは報復措置を取る。相手が断固として挑むなら、こちらもそうする。どちらが長く耐えられるかだ」と、フェイスブックに投稿した動画で語った。

今回の関税と投資制限は、中国の知的財産権侵害を巡るUSTRの調査をもとに通商法301条に基づき発動された。

またトランプ氏の覚書は、外国企業が中国で合弁事業を行う際、現地企業に技術のライセンス供与が求められていることについて、世界貿易機関(WTO)に提訴するようUSTRに指示した。米政権はWTOに批判的な姿勢を取っているが、WTOを通じて貿易戦争が回避される可能性もある。

トランプ大統領の署名前、ホワイトハウス高官は関税対象となる中国製品は500億ドル相当との試算を示していた。トランプ大統領が発表した600億ドルとの差について説明はない。

企業団体「米中ビジネス協議会」のジョン・フリスビー代表は「米企業は、利点より損害が大きくなる恐れのある一方的関税などの制裁だけでなく、こうした問題が解決されることを望んでいる」と述べた。

長期的に見た場合の世界貿易の最大リスクは報復的な貿易戦争ではなく、ゼネラル・モーターズやアップルなど米大手企業の世界的なサプライチェーンが機能停止することかもしれない。

英コンサルタント会社、TSロンバードでマクロ経済調査を担当するダリオ・パーキンス氏は「全面的な貿易戦争にならなくても、緊張はさらにエスカレートするだろう。それによって、世界のサプライチェーンが混乱し、投資家心理に悪影響を与える恐れがある」と懸念した。

[ワシントン 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

7月企業向けサービス価格、前年比2.9%上昇 前月

ワールド

米政権、EUデジタルサービス法関係当局者に制裁検討

ワールド

米商務省、前政権の半導体研究資金最大74億ドルを傘

ビジネス

低水準の中立金利、データが継続示唆=NY連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中