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インドネシア・スハルト一族に復活の動き──3男トミーが大統領狙う

2018年3月27日(火)17時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

だが、国会議長だったスティア・ノファント党首が汚職容疑で逮捕されて党内刷新に迫られ、旧体制の象徴であるトミー氏ら古参メンバーに逆風が吹き始めたこともトミー氏の離党、自党結成の一因とされている。

独裁体制への回帰は否定

トミー党首は「現代は殺人や強盗が横行し、宗教指導者が襲撃される不安定な時代である。スハルト時代に逆戻りすることはないが、経済5カ年計画などよい政策は引き継ぐべきで、インドネシアをさらに発展させたい」と言った。

スハルト独裁体制への回帰は否定しながらも「古き良き時代」をアピールしている。

国民の間にはスハルト元大統領のような「強い指導者」による「安定した経済」の時代を熱望する声もあることも事実。それでも、トミー氏の求心力には限りがあるかもしれない。

「プラボウォ党首は元軍人で強い指導者のイメージがあるが、トミー氏は汚職、殺人教唆、遊び人などマイナスなイメージが先行しており、スハルト元大統領の実の息子とはいえ、もはや求心力はない」(インドネシア紙記者)との見方が有力だ。

政治評論家のトビアス・バスキ氏も「トミー氏の動きはスハルト一族の政治的復権を目指す最後の試みになるだろう。あまり拙速に大統領などを目指せば失敗に終わる可能性は高い」と分析している。

トミー党首の新党が多数の議席を確保することは厳しいとみられているが、プラボウォ党首とペアを組んで正副大統領に立候補する可能性はあると取りざたされている。

この2人にはジョコ・ウィドド大統領にない強みがある。プラボウォ党首は軍人出身、そして2人共スハルト元大統領のファミリーで、ビジネス界での経験が豊富で巨額の富をもつ。

2019年の大統領選挙は総選挙結果にもよるが、庶民派のジョコ・ウィドド大統領と軍・財界・スハルト一族による対決の構図になりそうな雲行きだ。

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