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妹・金与正を「アイドル化」した金正恩のメディア戦略

2018年2月20日(火)13時45分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

庶民の中には、「今まであれだけ(韓国を)悪しざまに非難しておいて、よく恥も外聞もなく妹を送り込めた」などと金正恩体制を非難する人もいるという。また、「妹を送り込むほど南北関係の改善が急務だった」とし、北朝鮮国内の状況がよくないことの現れと見る人もいるとのことだ。

さらに、金与正氏の体形から妊娠説が出ていることについては「あんなに腹が出ているのを見ると、子供を身ごもっているのは確実だ」という意見と、「身重ならいくらなんでも敵地に送り込まないだろう」という意見に分かれているという。

今まで北朝鮮メディアでさほど大きく取り上げられたことがなかった金与正氏が、労働新聞の1面を飾ったことについて、高級幹部の間では次のような話が交わされているという。

「元帥様(金正恩氏)は夫人の李雪主(リ・ソルチュ)同志より、妹(金与正氏)の言うことをよく聞くほどかわいがり、信頼が厚い。李雪主同志があまり表舞台に立たないのは、金与正氏の影響力のせいだというのが高級幹部の間での評価だ。老幹部の中には、金正日総書記と妹の金慶喜(キム・ギョンヒ)氏との関係より格別だという人もいる」(情報筋)

いずれにしても、北朝鮮国内においても今後しばらくは、金与正氏への注目度は高まって行きそうな気配だ。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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