最新記事

アメリカ政治

ロシア疑惑で追いつめられたトランプは核のボタンを押す寸前だ

2018年2月15日(木)15時52分
ジェシカ・クウォン

トランプの人格は極端、大統領としては危険極まりない、と精神科医は分析する Joshua Roberts-REUTERS

<ロシア疑惑の捜査進展でトランプの精神状態が悪化し、核攻撃に走る恐れが高まっていると精神科医たちは警告する>

ドナルド・トランプ米大統領の精神状態は「悪化の一途」だと、アメリカの精神科医が見解を示した。2016年の米大統領選でロシアと共謀した疑惑をめぐってロバート・ムラー特別検察官が進める独立捜査にじわじわ追い詰められて、もう少しで「核のボタン」も押しそうな崖っぷちにあるという。

ムラーの捜査が大詰めを迎えていることによるストレスで、「どう見てもトランプは苛立っている」、と精神科医のジョン・ガートナーは言った。首都ワシントンで2月12日に開かれた、トランプの弾劾を求める団体主催「弾劾せよ」のイベントで、精神科医と核分野の専門家によるパネルディスカッションに参加したときだ。

「ムラーの捜査が核のボタンを押すようトランプを追い込む一因になっている、ということを我々は理解する必要がある。トランプにしてみれば、それで自分の抱える問題が全て片付くのだから」と、ガートナーは言った。核攻撃で命を奪われる人たちに対する同情や懸念が、トランプには微塵もないという。

「今の状況は落ち着くどころか、悪化の一途だ」「日を追うごとに、人類滅亡の危険が増大している」

トランプは同じ日、アメリカが核兵器を二度と使わなくてもいいよう望むが、「諸外国が核開発を進めている手前」アメリカも核兵器の近代化を進めていく、と発言。核兵器削減は「彼らの今後の出方による」とした。

パネリストを務めた核安全保障の専門家ジェームズ・ドイルは、「衝動的で、怒りやすい、或いは欲求不満を抱えやすく、好戦的で、過度に虚勢を張るか執念深い人物」は大統領としてふさわしくない、と言った。それらの特徴全てにトランプは該当する、と言われている。

倫理規定を破っての警告

精神科医のデービッド・リースは、トランプの矛盾したツイートの例を挙げて、「論理的思考力がまるで欠けている」と言った。

「つまり、これから起こり得る危機的状況下で、米政府を安全に指揮し、論理的な決断を下すという信頼が全く置けない人物が、ホワイトハウスの主だということだ」

米精神医学会には、1973年に制定された「ゴールドウォーター・ルール」と呼ばれる倫理規定がある。精神科医が公的な人物について、直接検査を行わずに専門家としての意見を述べることは非倫理的、と定めたものだ。だが、「弾劾せよ」を設立して470万人もの署名を集めたトム・ステイヤーは、パネルディスカッションの冒頭にこう言った。

「精神医学会には、トランプの極端な人格と大統領としての危険性に対し、1970年代以降守ってきた倫理規定も破らざるをえないほどの懸念が渦巻いていたのだと思う」

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中