最新記事

米中貿易

トランプの対中保護主義が好調な株価を脅かす

2018年1月29日(月)16時46分
ビル・パウエル

米中関係の緊張の高まりが懸念される一方で、カナダとメキシコという主要貿易相手国との交渉も続いている。トランプはNAFTAの再交渉に、自分の望むような形に作り直せないなら脱退するとの厳しい姿勢で臨んでいる。メキシコとカナダの両国におけるサプライチェーンに大きく依存している米自動車業界は、業界の存続に関わると思われる問題について政権側に説明するとともに、政権との交渉を行っている。政権関係者によれば自動車業界の懸念は深く、また再交渉の結果次第では同業界は大きな打撃を受け、雇用やGDPの成長に大きな影響が及ぶ可能性もあるという。

「公平な土俵で戦いたいだけ」と言うが

ダボスにも同行したロス商務長官は、アメリカに貿易戦争を始める意図はなく、ただ(特にハイテク製品に関し、中国と)同じ土俵で戦えるよう環境整備したいだけだと述べている。果たしてその2つを分けることに本当に意味があるのかどうかはさておき、株式市場はこれまでのところ、安定している。アメリカの主要な3つの株価指数は1月26日、そろって過去最高値を更新して取引を終了した。

だからといって今後も安泰とは言いがたい。厳しい決断をしなければならない日は迫っている。中国やメキシコ、カナダとの間に「貿易紛争」が存在するか否か、そしてその深刻さはどの程度かについて、アメリカは判断を示さなければならない。

通商問題によって、経済の足元があっさりとすくわれる可能性もある。好調な経済はこれまで、トランプの支持率を多少なりとも押し上げてきた要素だった。

果たしてトランプ政権に、その経済を危険にさらす覚悟があるのだろうか。

(翻訳:村井裕美)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アラビカ種コーヒー豆、米関税で価格高騰=ブラジル業

ワールド

インド外相 対米貿易交渉に「譲れぬ一線」 米代表団

ワールド

チベット巨大ダム、乾季にインド主要河川の水流が最大

ワールド

HSBCスイス子会社、中東の富裕層顧客1000人超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 3
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中