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米中関係

米中険悪化――トランプ政権の軍事戦略で

2018年1月29日(月)11時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

二人の握手は遠のくのか?(写真は2017年11月9日の米中首脳) Jonathan Ernst-REUTERS

先般発表されたアメリカの「2018国防戦略報告」に関して中国は激しく抗議し、米中関係が突如悪化している。中国は同時に、インド太平洋戦略を進める日米豪印に楔を打つため、日本に秋波を送り始めた。日中友好、ご用心!

中国国防部の言い分

1月19日、アメリカの国防総省が「2018アメリカ国防戦略報告」概要を発表した。中国やロシアとの競争を中核に据え、両国の覇権主義を非難している。これに関して、翌20日に、中国国防部のスポークスマン任国強氏が、記者会見でアメリカに抗議した。まず、任国強氏の基本的な主張を以下に述べる。( )内は筆者。

1.アメリカの国防戦略は中国軍隊の現代化建設に関して妄説(もうせつ。根拠がない言説)を吐き、事実を顧みずに、いわゆる大国間の競争と「中国軍事脅威論」を誇張し、ゼロサムゲーム論に終始し、対立と対抗に満ち溢れて、事実に基づかない論断をしている。これは(昨年12月に発表された)アメリカの「国家安全戦略報告」に続く、冷戦時代の色合いを濃厚に残した報告書である。

2.中国は堅固に平和発展の道を歩んできており、防御的な国防政策を堅持し、軍事拡張を行なわず、勢力範囲を追求せず、常に世界平和の建設者であり、全地球が発展するための貢献者であり、国際秩序の擁護者である。

3.近年来、中国の軍隊は積極的に国際的な責任と義務を請け負っており、国際公共安全を守るために、可能な限りの最大限の努力を惜しんでいない。その努力と貢献は、国際社会からの高い評価と礼賛を受けている。

4.理非曲直(正邪)は自ずから明らかで、人はみな正義感を持っている。心根が悪く覇権思想を持っている「どこかの国」(=アメリカ)と違い、中国は覇権の意思は全くなく、「覇権を狙っている」というレッテルを中国に貼るのは不可能なことである。

5.中国が南シナ海で(人口)島礁を平和発展のために建設する活動を行ない、必要な防衛施設を配備しているのは、あくまでも中国の主権の範囲内でのことだ。現在、南シナ海の局面は常に安定化してより良い方向に向かっているが、しかし「個別の、ある国」(=アメリカ)は、南シナ海の波が穏やかであるのを見たくないようだ。何としても南シナ海での軍事力配備と軍事の存在を煽りたいらしく、「航行の自由」という旗の下に覇道をほしいままにしている。これこそが正に、この地域の軍事化を目論んでいる黒幕(=アメリカ)である。

6.われわれはアメリカが「冷戦」思想を放棄し、平和発展という時代のテーマと世界の趨勢に順応し、理性的客観的に中国の国防と軍隊建設を扱うことを促したい。また、中国と同じように、両国首脳のコンセンサスに沿って両国関係を落着させ、両軍の関係が中米両国の安定要素になるように(アメリカが)努力するように望む。(以上)

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