最新記事

世界経済

欧州首脳、ダボス会議でトランプの「アメリカファースト」に対抗できるか

2018年1月23日(火)17時15分

1月21日、「分断された世界で共有される未来の創造」というテーマが掲げられた今回の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で特に注目されるのは、欧州各国の首脳だ。写真は仏ダボスの窓に描かれたダボス会議のロゴ(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が今週23日─26日まで開催され、各国の政治家や企業、銀行の幹部が一堂に会して活発な議論を行う。「分断された世界で共有される未来の創造」というテーマが掲げられた今回特に注目されるのは、欧州各国の首脳だ。

彼らには、トランプ米大統領が出席した場合に発するであろう「米国第一主義」に先んじて、それに対抗する理念を打ち出すことが求められている。

リーマン・ブラザーズ破綻を引き金とする世界金融危機から10年を経て、経済は成長を取り戻し、株価は過去最高値圏にある。それでも保護主義から気候変動、サイバー攻撃、戦争といったさまざまなリスクが存在するため、今後さらに世界経済がさらに明るくなるという希望が幻にすぎなくなる恐れも出ている。

ドイツ連銀の元総裁でスイスのUBS会長を務めるアクセル・ウェーバー氏はロイターに、これらのリスクすべてが金融市場の脅威になるわけではないと指摘しつつ「世界のつながりが既に幾分薄れ、今後もその動きが続いていく可能性があるとの見方には賛成する」と語った。

ダボス会議は、インドのモディ首相の演説で幕を開け、26日のトランプ氏による演説で幕を閉じる予定。昨年の会議を締めくくったのは中国の習近平国家主席で、内向きになった米国に代わって中国が世界のリーダーシップを担うと提案した。

ホワイトハウスによると、米政府機関閉鎖はトランプ氏のダボス会議出席に影響を及ぼさない見通し。ただ行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長は、事態が「流動的」になっていると警告した。

一方、モディ氏とトランプ氏の演説の間には、昨年姿を見せなかった欧州首脳が発言する。

先陣は24日のフランスのマクロン大統領の演説になるだろう。マクロン氏は、グローバリゼーションに対する自身の評価を明らかにするとともに、格差拡大や地球温暖化、ナショナリズムの台頭への対応策を打ち出す、と側近は話している。

英王立国際問題研究所のロビン・ニブレット所長は「マクロン氏がトランプ氏に対抗する存在となるのをためらう余地があるとは思えない」と述べた。

マクロン氏には、ドイツのメルケル首相やイタリアのジェンティローニ首相が助太刀する見通し。会議では欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長も演説するほか、英国のメイ首相やイスラエルのネタニヤフ首相などの出席が予定されている。

[ダボス(スイス) 21日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中