最新記事

中国経済

中国、一帯一路でカンボジアに投資加速 「第2のマカオ」誕生か

2018年1月3日(水)11時48分

中国が建設したダムが、カンボジアにおける大半の電力を供給している。カンボジアの主力輸出品を生産する衣料品工場の約3分の1は中国企業のものだ。

また、カンボジアの対外債務58億ドルの半分近くは対中国であり、他のどの国に対する債務よりも何倍も多い。

またカンボジア政府の、中国政府に対する「政治的な借り」も大きくなっている。

フン・セン首相が来年の選挙を前に主要な政敵を逮捕し、その政党を解散させたことは、西側諸国からの批判を浴びているが、中国は、カンボジアによる秩序維持の努力であるとして支持を明言している。
増加する逆に中国にとっては、カンボジアから地域的な問題を巡る忠実な支持を期待できるし、東南アジアに確固たる戦略拠点を確保することができる。シアヌークビルは、中国企業の租借地で挟まれており、カンボジアの海岸線の3分の1以上は中国企業に支配されている格好となる。

シアヌークビル向けの大型投資は、地主にとっては天の恵みだ。あるホテル経営者は、カジノスタッフの宿舎とするため、中国企業がホテルを買収するため、通常の2倍の金額を提示してきたと語る。この経営者は、もう働く必要すらなくなってしまった。

だが、借りる側にとっては悪夢だ。西側諸国の現地駐在員は「中国化」を話題にしている。中国人が自分たちよりはるかに高い金額を払うために、自分たちが締め出されてしまう現象のことだ。

不動産代理店のThim Sothea氏は、市場変化による厳しい教訓を得た。同氏の経営するシアヌークビル・プロパティはビーチに近い場所にあったが、地主から退去させられてしまったのだ。中国企業に2倍の賃料で入居してもらうためである。

「ここはチャイナタウン化しつつある」と同氏は言う。まだ新たなオフィスが見つからないため、カフェで取材に応じた。「ホテルや不動産を持っている金持ちにとってはよい話だが、それ以外は皆が不幸になっている」

冒頭のLao Qi氏にとっても、まったく問題はない。彼はすでに新たなレストランを開店する計画を立てている。今度はもっとビーチに近い場所になると期待している。

(Matthew Tostevin記者、Prak Chan Thul記者、翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルとハマス、合意違反と非難応酬 ラファ検問

ビジネス

ABB、AIデータセンター向け事業好調 米新規受注

ワールド

ロシア、中印の公式声明を重視 トランプ氏の「原油購

ワールド

仏首相への不信任案否決、年金改革凍結で政権維持
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中