最新記事

ロシア

プーチンの本音は「五輪禁止」に感謝?

2017年12月15日(金)16時20分
エイミー・フェリスロットマン

ボイコットしない理由

実際にIOCの決定は、ドーピングに対する処分としては、これまでで最も厳しいものだ。ロシア人から見れば、それは欧米諸国にはびこる「ロシアいじめ」の証拠だろう。プーチン自身、IOCの決定は「巧妙に仕組まれたものであり、政治的動機がある」と批判した。

特定の国が五輪出場を禁じられた例は過去にもある。第二次大戦後に初めて開催された48年ロンドン夏季五輪には、ドイツと日本が招待されなかった。南アフリカはアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施している間、やはり五輪への参加を認められなかった。

だが、ドーピングを理由にある国が出場を禁止されるのは初めてだ。しかもロシアはソ連時代からスポーツ大国で、出場選手も獲得メダルも多い。それだけに、今回の処分はロシアにとって受け入れ難いものに違いない。IOCが出場禁止を決めたら、ロシア側から大会をボイコットするのではという噂も事前にあった。

そうした例も過去にはある。79年にソ連がアフガニスタンに侵攻すると、アメリカを中心とする西側諸国は80年のモスクワ夏季五輪をボイコットした。その報復として、ソ連や東欧諸国は84年のロサンゼルス夏季五輪をボイコットした。

だが今回、ロシアが平昌五輪をボイコットすることはなく、出場するかどうかは各選手の判断に任せるとプーチンは述べた。IOCの決定では、ロシア人でも厳格なドーピング検査に合格した「クリーンな選手」なら出場できる。ただし、たとえ表彰台に上がれる成績を収めても、ロシアの国旗と国歌は使用されず、白い五輪旗と五輪賛歌が使われる。

「世界にいじめられるロシア」の守護者を自任するプーチンが、なぜボイコットを思いとどまったのか。それは次期大統領選に向けて、少しでも国民の支持を確実にしたいからだろう。

「外敵」を使って支持固め

もちろんプーチンが勝つことは、ほぼ間違いないとみられている。全国的な支持率は80%を超えるし、最大野党の党首は過去の横領罪(でっち上げとされる)のために出馬できない。

それでも同じ人物を20年近く権力の座に就けておくことには、ロシア人も躊躇があるようだ。モスクワの世論調査会社レバダセンターが今月発表した調査結果によると、3月の大統領選の投票に行く気がないと答えた人は、40%にも上った。10年前のほぼ2倍だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

PayPayが12月にも米でIPO、時価総額3兆円

ビジネス

英議員、中ロなどのスパイの標的 英情報機関が警告

ワールド

ロ潜水艦が仏沖で緊急浮上、燃料漏れとの情報 黒海艦

ワールド

ブレア元英首相のガザ和平理事会入り、トランプ氏「確
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中