最新記事

アフリカ

ジンバブエ政変の裏に中国ダイヤ利権

2017年12月5日(火)15時30分
バサブジット・バナジー、ティモシー・リッチ

ラコステ派の力の源泉である軍とも、中国は緊密な関係にある。銃砲から戦闘機に至るまで、さまざまな装備をジンバブエ軍に売却してきた。中国は、新設された国軍大学の建設費も提供している。

軍事協力とともに取り沙汰される問題がある。ジンバブエ東部マランゲ地方のダイヤモンド採掘場の収入が、中国からの兵器購入に流用されたという指摘だ。採掘場への主な投資企業は、中国の按針インベストメンツだ。

中国側は、ムガベ政権の「現地化政策」がダイヤ採掘ビジネスに影響するのではないかと懸念していた。この政策では、外資企業の株式の51%以上をジンバブエ人が保有するとされていた。

実際、12年から按針など中国企業2社が株式の51%をジンバブエ人に保有させる形で操業を開始。だが15年、ジンバブエ政府はこの事業を国営企業ジンバブエ統合ダイヤモンド会社(ZCDC)の下に置くこととした。

中国政府はこれに強く反発し、両国関係は悪化。16年に中国は、ムガベ政権による反政府勢力弾圧を支持することを拒んだ。

中国がダイヤ採掘事業に絡んで受けた不利益は、ジンバブエ軍にも波及した。軍部はチウェンガ司令官の下、中国企業2社と協調関係にあったと伝えられる。例えば按針インベストメンツの株式の30%は、子会社を通じて軍部が握っているという。

軍とダイヤ業界の結び付きは、ムガベ政権高官らの懐を肥やしている。ジンバブエが98~02年のコンゴ内戦に介入した際も、ムナンガグワは軍を利用したダイヤの違法採掘で儲けたと国連から批判された。

ムナンガグワは副大統領を解任された後、中国に渡ったと報じられている。中国共産党の上層部と関係を築いたのは、かつての独立闘争時代に中国から訓練と武器を供与されたことが縁だったらしい。

チウェンガも11月8~10日に訪中したが、これは以前から予定されていた公式訪問だった。チウェンガは常万全(チャン・ワンチュアン)国防相と会談し、共産党の中央軍事委員会連合参謀部参謀長に就任したばかりの李作成(リー・ツォチョン)とも会っている。

中国はジンバブエ政変へのいかなる関与も否定し、静観する姿勢を示しただけだった。しかしムナンガグワが新大統領となり、国軍のチウェンガの後ろ盾も得るとなれば、中国はジンバブエの政治・経済を掌握したも同然だ。

そして中国の利益にとって不可欠な地域の安定も約束される。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中