最新記事

米外交

トランプの無策が中国の追い風に

2017年11月27日(月)10時55分
ダン・デ・ルース

中国は軍事力にものをいわせ南シナ海の実効支配を進める(写真は中国初の国産空母「遼寧」) Bobby Yip-REUTERS

<アジア歴訪でもトランプ政権の政策は不透明。このままでは既成事実化を進める中国の思う壺だ>

11月5~14日のアジア歴訪でドナルド・トランプ米大統領は主に北朝鮮問題と通商問題に集中したようだ。南シナ海の領有権問題で強硬姿勢を強める中国を厳しく批判することは避けた。

その隙に中国は、世界有数の戦略的海域の実効支配を黙々と進めている。人工島に軍事施設を増設し、周辺の国々を犠牲にして南シナ海での軍事プレゼンスを急速に増大させている。

周辺国、西太平洋で影響力を維持したいアメリカ、そして長年アジアの平和と繁栄を推進してきた法に基づく国際秩序にとっては、厄介な話かもしれない。

10月の中国共産党大会で、習近平(シー・チンピン)国家主席は南シナ海における人工島建設を1期目の実績に挙げ、「海洋権益の擁護を効果的に遂行」したと自画自賛。その一方で、周辺国の懸念を和らげようと同海域の「安全な航行」を保障している。

「トランプが北朝鮮問題に気を取られ、かつトランプ政権の政策決定が混乱し遅々として進まないせいで、南シナ海にツケが回っている」と、米外交問題評議会のシニアフェローでジョー・バイデン前副大統領の顧問を務めたイーライ・ラトナーは言う。

中国は近年、南シナ海に一夜にして人工島を建設。某米軍幹部に「砂による万里の長城」を築いていると言わしめた。それに比べれば、最近の進出の衝撃度は薄い。「切迫感がないせいで、今回の歴訪では優先課題にしなかった」のだろうと、オバマ政権のアジア政策特別顧問を務めたユーラシア・グループのエバン・メディロスは言う。

だが専門家によれば、中国は水面下で軍事基地を拡大し、レーダーやセンサー設備、ミサイル格納シェルター、燃料や水や弾薬の広大な貯蔵庫などを建設。着々と南シナ海の軍事拠点化を進めている。

今年7月半ば、ベトナムはスペインの国有石油ガス会社レプソル傘下の自国企業に自国の排他的経済水域(EEZ)内での天然ガスの採掘計画を許可した。ところが中国がベトナムの駐中国大使を呼び付け、中止しなければ軍事行動も辞さないと威嚇。アメリカには頼れないと感じたベトナムは早々に採掘中止を決定した。

「兵器や軍事設備の数の力でフィリピン、ベトナム、マレーシアは締め出され始めている」と、米戦略国際問題研究所のグレゴリー・ポーリングは指摘する。

MAGAZINE

特集:遺伝子最前線

2019-1・22号(1/16発売)

革命的技術クリスパーで「超人」の誕生も可能に── 人類の未来を変えるゲノム編集・解析の最新事情

人気ランキング

  • 1

    「お得意様」は気づいたら「商売敵」に 中国の猛追へ対策急ぐドイツ

  • 2

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」というロシアの主張は大間違い

  • 3

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗る豚......すべて「白夜」の続き

  • 4

    仏マクロン政権「黄色いベスト運動」対応で財政拡大 E…

  • 5

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 6

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 7

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 イン…

  • 8

    米政府閉鎖で一カ月近く無給の連邦職員、食料配給に…

  • 9

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両…

  • 10

    地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し…

  • 1

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 インドネシア、違法飼育の容疑で日本人を捜索

  • 2

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 3

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両手は縛られていた

  • 4

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

  • 5

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」という…

  • 6

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗…

  • 7

    インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐…

  • 8

    宇宙から謎の「反復する電波」、2度目の観測:地球外…

  • 9

    タイ洞窟の少年たちは見捨てられる寸前だった

  • 10

    NGT48山口真帆さん暴行事件に見る非常識な「日本の謝…

  • 1

    炎上はボヘミアン・ラプソディからダンボまで 韓国の果てしないアンチ旭日旗現象

  • 2

    口に入れたおしゃぶりをテープで固定された赤ちゃん

  • 3

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 4

    小説『ロリータ』のモデルとなった、実在した少女の…

  • 5

    日韓関係の悪化が懸念されるが、韓国の世論は冷静──…

  • 6

    オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由

  • 7

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 8

    アレクサがまた奇行「里親を殺せ」

  • 9

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 10

    インドネシア当局、K-POPアイドルBLACKPINKのCM放映…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月