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早わかりサウジ情勢 若きムハンマド皇太子が権力掌握、脱石油目指す

2017年11月11日(土)18時32分


アラムコの株式公開

サウジは国営石油会社サウジアラムコの約5%株式を来年新規公開(IPO)する計画だ。アラムコ株のIPOは、皇太子が掲げる経済改革計画「ビジョン2030」の柱と位置付けられている。

アラムコのIPOによる調達額は最大1000億ドル程度となる見込み。ただ、2兆ドルとされるアラムコの企業価値に懐疑的な見方や、IPOが先送りもしくは棚上げされるのではないかとの憶測も流れている。

経済改革

「ビジョン2030」は巨額財政赤字の圧縮を目的にスタートしたが、石油以外の成長や雇用を生む新たな分野はまだ創出できていない。計画には民間投資呼び込みや民営化促進、世界最大の政府系ファンド設立なども含まれる。女性の労働参加率を引き上げることも目的の1つだ。

燃料や水、電気に対する政府補助の段階的な削減は既に始まったとはいえ、こうした引き締め策は国民の受けが悪い。原油安のあおりでサウジ経済は減速しており、既に緊縮策の一部は見直しや先送りとなっている。

社会・文化の変化

サウジはイスラム教スンニ派の中でもコーランの教えに厳格なワッハーブ派に属し、男女同席やコンサート、映画などを禁じている。

皇太子の力が強まるとともに権限が若い年齢層に移っており、社会面や文化面に変化が生じている。来年からは女性が車を運転できるようになり、スポーツイベントへの参加も認められる。

イスラム教聖職者が絶対的な権威を有してきた教育、裁判所、法曹といった部門でも改革が始まっている。

NEOM

皇太子は先月、ヨルダンやエジプトにまたがる新ビジネス・産業都市「NEOM」の建設構想を打ち出した。石油依存からの脱却が狙い。

プロジェクトは5000億ドル規模で、面積は2万6500平方キロメートルに及ぶ。電力はすべて再生可能エネルギーで賄い、エネルギーや水、バイオテクノロジー、食品、先端的な製造業、エンターテインメントなどの産業を誘致する。

[8日 ロイター]


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