最新記事

中国外交

中国はトランプ訪日をどう見ているか

2017年11月7日(火)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

CCTVでは毎日のように中韓の関係改善が報道された。解説者によれば、この合意文書は「北朝鮮の核問題が解決すれば、韓国からTHAADを撤退させることに韓国が同意したことを意味し、米軍が中国の軍事配置を偵察するという役割は果たしえない」とのこと。

また韓国の文在寅は、米韓同盟によりアメリカと軍事協力はするが、絶対に日本と「日韓(軍事)同盟」を結ぶことはあり得ず、日本を含んだ形での「日米韓の軍事協力はない」ということを表明している。つまり「日米韓による対中包囲網」は絶対に存在し得ないというのが中国の見解だ。

これさえ押さえておけば、中国に怖いものはない。

経済制裁を恐れた韓国が、中国に身を売った形だ。

中国、日米首脳共同記者会見に不快感

したがって、8日にトランプが韓国で、いかなる演説をしようとも、それが中国に対する何らかの譲歩を引き出すことはあり得ないと、中国は高をくくっている。

ましていわんや、「安倍・トランプ」の日米首脳が記者会見で「(北朝鮮問題に関して)中国のさらなる大きな役割が重要との認識で一致した」と表明したことについて、中国外交部は6日午後の定例記者会見で、「われわれが何をすべきかに関して、誰からも何も言われる筋合いはない」と激しい不快感を表明した。

安倍首相が日米の強いきずなを見せれば見せるほど、習近平はその分だけ安倍首相に嫌悪感を抱き、日本と距離を置こうとする。

双方ともに日中友好を唱え、安倍首相は李克強首相や習近平国家主席の来日の可能性を政治業績のように宣伝しているが、そのようなことをすれば、中国からの「上から目線」は強まるばかりだ。それは愉快なことではないし、日本の国益に利するとも思えない。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米出版マグロウヒルがIPO計画、評価額42億ドル目

ビジネス

英政府、EV割引制度を導入へ 排出量実質ゼロへ向け

ビジネス

大阪万博の米ナショナルデー、政府参加者は調整中=赤

ビジネス

米ロサンゼルス港、6月貨物取扱量が大幅回復 年末商
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中