最新記事

民族主義

カタルーニャ独立に揺れるスペイン 運動静まったバスクが手本となるか

2017年10月11日(水)17時33分

数十年にわたる分離独立闘争で850人以上の犠牲者を出してきたバスク地方の反政府組織「バスク祖国と自由(ETA)」は、今年武装解除に応じ、武装闘争に事実上終止符を打った。

バスク地方は今では、1人当たりの経済生産で同国最高水準の州の1つとなり、失業率も国内で最低水準となっている。

「バスク地方では、長年の武装闘争や経済危機後の不安定さへの倦怠(けんたい)感が大きく、独立議論は棚上げになっている」と、デウスト大のハビエル・バランディアラン教授は指摘する。

スペインの経済負担

バスクの財政自治の起源は19世紀にさかのぼり、1978年にスペイン憲法に明文化されたもので、欧州の地方に認められたなかでは最も寛大なものの1つだ。

スペイン有数の経済地域で、国内生産の5分の1を稼ぐカタルーニャに同様の権利が認められれば、スペイン国家にとって約160億ユーロ(約2.1兆円)の損失になると、スペイン科学研究高等会議(CSIC)が2014年に指摘している。

これは来年の予算の約13%にあたる額で、スペインの債務や借り入れコストにも影響する。

このためラホイ首相は、カタルーニャに対してバスク同様の寛大な扱いは除外している。

バスク自治州とスペイン政府の取り決めでは、バスクは地域のほぼ全ての徴税を独自に行っており、その額は今年130億ユーロ(約1.7兆円)に上る見通しだ。

バスク側は、防衛やインフラ整備関連費用などの国家支出負担分として、8億ユーロを政府に返還することになっている。

ラホイ首相は、少数与党として政権に返り咲いた昨年、バスク民族主義党に2017年予算を支持してもらった見返りとして、バスクとの取り決めでさらなる譲歩を行った。

これは、カタルーニャと同様の取り決めを交わすことに反対することが確実な、他の地方では不人気だった。自分たちには歳入減を意味するからだ。

スペインでは一般的に、地方政府は徴収した税金を中央政府に納め、中央政府は経済的に貧しい州を優遇する方程式に従って再分配する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スペースXの上場計画を投資家は歓迎 史上「最も熱狂

ビジネス

世界のEV販売台数、11月は24年2月以来の低い伸

ワールド

トランプ氏、議決権行使助言会社の監視強化を命令

ワールド

ブルガリア内閣が総辞職、汚職まん延への抗議デモ続き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 9
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 10
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中