最新記事

災害支援

「トランプは我々を犬扱いした」プエルトリコの怒りと証拠動画

2017年10月5日(木)14時04分
グレアム・ランクツリー

ハリケーンで被災した米領プエルトリコ・サンファンを見舞ったトランプだが Jonathan Ernst-REUTERS

<ハリケーン直撃から2週間経ってやっと被災地にやってきたと思ったら、支援物資を被災者にポンポン投げ始めたトランプの頭の中は?>

ドナルド・トランプ米大統領は3日、超大型ハリケーン「マリア」で深刻な被害を受けた米自治領プエルトリコを2週間後にようやく視察。数時間の滞在中に被災者にペーパータオルをぶん投げる、未だに全島の94%が停電したままの状況も知らないのか、「もう必要ないだろうけど」と冗談(?)を言いつつ懐中電灯を渡すなど、支援の遅れに輪をかけて被災者を激怒させている。

被災者の間では二級市民のように扱われた、という声が多い。なかでも評判が悪いのが、ペーパータオルのロールをポンポンと被災者に投げてみせたこと。「犬にボールを投げるのと同じ感覚だ」と、ニューヨーク在住のプエルトリコ出身者ジョエル・イサークはメディアに訴えた。

(「なんで被災者に物を投げるんだ。人間扱いしていない」と、ノースカロライナ州在住のプエルトリコ出身者フランセス・アルバラドも憤る)


トランプは予め選んであった被災世帯を訪問。スペイン語で感謝と歓迎の挨拶を受けてご満悦だった。

8月末のハリケーン「ハービー」、9月初めの「イルマ」でそれぞれ大きな被害を受けたテキサス州とフロリダ州には、トランプは被災後数日で視察に行った。だがイルマとマリアのダブルパンチを受けた人口350万人のプエルトリコへの視察には約2週間かかったように、支援が後手後手に回っている。被災当初は、国家斉唱の際に起立しないNFLの選手たちを非難するのに1日20以上のツイートを打ちながら、プエルトリコには何の言及もない日もあった。

(「トランプがプエルトリコを植民地のように扱う限り、ハリケーン・マリアの被害から立ち直れない」)


トランプ政権は支援は順調に進捗していると強調、連邦政府の災害対応能力を示せた点で「非常に良いニュースだ」と自画自賛している。だがプエルトリコ最大の都市で、自治政府所在地サンフアンのカルメン・ユリン・クルス市長は先週、たまりかねたようにこう訴えた。「良いニュースなんかじゃない。人々は死にかけている。生きるか死ぬかの瀬戸際だ。食糧も水もなく、事態はどんどん悪化している」

これに対しトランプは、クルス市長は民主党にそそのかされて、自分の悪口を言い始めたとツイート。女性市長は「指導力不足」で、災害に対応できないと批判した。

トランプは現地滞在中、1000人以上の死者が出た05年のハリケーン「カトリーナ」に比べれば、死者16人の「マリア」は「本物の大惨事」とは言えないと述べた(その日のうちに地元当局は死者数を16人から34人に訂正)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中