最新記事

アップル

iPhone8はなぜ売れないのか

2017年10月18日(水)16時20分
アンソニー・カスバートソン

ニューヨーク5番街のアップルストアで発売されたばかりのiPhone8を手に入れた女性 Brendan McDermid-REUTERS

<iPhone8はアップル史上初めて、前機種のiPhone7より売れない不名誉なモデルになりそうだ>

かつては新製品を発売するたび消費者を熱狂させてきたアップルだが、ここ数年はその栄光に翳りがさしている。9月に発売された「iPhone8」もそうだ。アップルの新型スマートフォンの発売日につきものだった行列もめっきり減って、いまでは多くの店で客よりスタッフが多いほどだ。

消費者の反応が鈍い理由としては、ブランドが陳腐化してきたことに加え、新世代のiPhoneには付加的な改良しか見られず、スマートフォン自体に新鮮味がなくなっていることが考えられる。

2つ目の理由は業界全体の傾向で、消費者がスマートフォンを買い替える頻度の低下につながっている。米金融大手シティグループの推定によれば、スマートフォンの買い替え間隔は、2014年には24カ月だったが、2016年には29カ月にまで延びた。

iPhone8は、「iPhone8Plus」および「iPhoneX(テン)」と並び、アップルが9月に発表した3種類の新型iPhoneのひとつで、大苦戦を強いられている。グーグル、華為技術(ファーウェイ)、サムスンなどが出す高級機種との競争が激化しているだけではない。身内からの競争にもさらされているのだ。

「iPhoneX」待ちも

iPhone8は、アップル史上初めて売れ行きが前機種を下回る不名誉なiPhoneになりそうだ。iPhone8を扱う店舗の報告によれば、前機種の「iPhone7」のほうが、発売されたばかりのiPhone8よりも人気があるという。

証券会社キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリスト、ジョン・ビンは顧客向けレポートのなかで、「(米英の通信機器店を対象に実施した調査で)回答者の多くは、かなりの割合の客が新しいiPhone8ではなくiPhone7を買っていると言う。iPhone8には目立った機能向上が見られないことが原因だ」

「店舗の回答からは、消費者がiPhoneXの発売を待っているか、iPhone8を買う前にiPhoneXと比較しようとしていることがうかがえる。通信機器店はiPhone8の販促もしているが、昨年のiPhone7発売時に比べるとはるかに控えめだ」

【参考記事】iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

iPhone8は、同機種の大型モデルである「iPhone8Plus」よりも人気がない。アップルの主力スマートフォンは標準モデルがいちばん売れるという過去の傾向に反した現象だ。

著名なアップルアナリストであるニール・サイバートは10月10日付けのTwitterで、「iPhone8PlusはiPhone8よりも売れている」と投稿した。その理由として、消費者の好みが変わったことを挙げる。「人々はより大きい画面サイズを求めている」とサイバートは言う。「iPhone8Plusはカメラも高機能だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地

ビジネス

米国株から資金流出、過去2週間は22年末以来最大=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中