最新記事

経済制裁

北朝鮮、4000人が働く世界最大級の美術工房 「アート」で外貨獲得へ

2017年10月12日(木)18時45分

国連安全保障理事会は、2016年に同社の像制作ビジネスを禁止した。北朝鮮がさらなるミサイル実験を重ねた8月には、万寿台創作社をブラックリストに載せ、世界的な資産凍結と渡航禁止の対象とした。万寿台創作社の事業を停止させる内容だった。

「これで、絵画や他のアート作品、モニュメント、建築物など、万寿台創作社が作るものは全て資産凍結の対象となり、購入できなくなった」と、国連外交筋は語った。

国連安保理はさらに、9月11日の追加決議で、全ての北朝鮮の企業や個人が関わる合弁事業を1月半ばまでに停止することを決めた。

それが、現存する万寿台創作社制作のアート作品にどう影響するのかは不明だ。

北京の画廊が多く立ち並ぶ地区に「万寿台画廊」があり、万寿台創作社の公式在外ギャラリーを自称している。画廊の責任者Ji Zhengtai氏は、画廊は制裁対象ではなく、ビジネスに影響はないと話す。

「今のような時こそ、北朝鮮と世界の相互理解を育てるため、芸術のような手段が必要だ」と、Ji氏は言う。

万寿台創作社の取引規模を把握するのは不可能だが、国連外交筋は、世界で数百万ドルに上っていたと推測する。

政治は関係ない

万寿台創作社の「海外公式サイト」を名乗るイタリアのサイト mansudaeartsudio.comは、万寿台創作社について「恐らく世界最大のアート制作センター」だと説明している。

万寿台創作社の平壌スタジオの敷地面積は、12万平方メートルあり、アーティスト1000人を含む約4000人を雇用している。また、13の創作グループに分かれており、7つの制作工場、50以上のサプライ部門を抱えている、と同サイトは説明する。

このサイトを運営しているのはPier Luigi Cecioni氏で、万寿台創作社と単独契約を結び、作品をオンラインで販売しているという。同氏は、売り上げ規模は明らかにしなかったが、万寿台創作社の制裁対象入りが発表された8月、売り上げは万寿台創作社に直接渡されていると、ロイターに明かした。

同氏は、制裁発表の数年前に購入した自分のコレクションから作品を販売していると説明する。また、同氏のサイトでは、オンラインで作品を購入する場合の売買契約は同氏のイタリアの会社との間で交わされ、万寿台創作社とではないと説明していた。国連制裁は、発効より前に遡って適用されない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア西部2州で橋崩落、列車脱線し7人死亡 ウクラ

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 8
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中